2008年5月25日

連載 続・高知市同和行政の今
O不透明さ残る「同和住宅」の入居選考

「同和住宅」の入居は06年から「選考方式」に戻されている
高知市の「同和行政」として@「市民会館」、A「児童館」、B同和団体への仕事補償(随意契約)と並んで主要な柱である旧同和向け市営住宅での「一定の配慮」(入居募集情報を市広報で公開せず旧同和地区内だけに周知する)の中で、2006年から旧同和向け住宅に入居判定に実施された選考方式(一般市営住宅は抽選)のシステムが明らかになりました。この選考方式の問題点を考えます。

高知市は06年10月の募集から旧同和向け住宅に限って選考方式をとっています。この過程では入居のあり方をめぐって部落解放同盟の言いなりにならず一定の自主性を保とうとした住宅課の対応に「解同」高知市協が激怒し、同年10月17日に朝倉総合市民会館で岡崎誠也市長を先頭に執行部60人が、解放同盟員250人による「確認・学習会」に出席させられ、この場で全ての部局が「今回の住宅入居問題についての見解」についての回答を求められ謝罪させられるという経過があったことから、高知市当局にとっては旧同和向け住宅の入居選考は非常に神経を尖らせている問題です。

「市民会館」の意見

同和行政の法的根拠が喪失した2002年(平成14年)から、高知市は一般の市営住宅と同じように、旧同和住宅も抽選で入居を決める方式をとるようになりました。抽選にすることで恣意的な入居の余地がなくなる反面、住宅困窮度がさして高くない応募者が当選してしまうなどの弊害もあることから、住宅課は02年以前に実施されていた選考方式に戻すべく準備をしており、前述の「解同」とのトラブルはあったにせよ、選考方式採用は既定の路線であるとしています。

しかし現在の選考システムには看過できない問題点があります。

選考の主な基準は、@月収、A現在の家賃負担の重さ、B現在の住居の狭さ、C寝たきりの病人や障害者がいたり、母子家庭であるなど世帯の状況、D現在住んでいる住居環境の炊事場やトイレ・風呂などが共同かどうか、日当たりや風通しが悪いかどうか、E騒音や振動の有無や勤務地までの距離などを点数化するもので、02年以前に使われていた基準と同一のもの。選考時には住宅課職員が応募者宅を訪問して申請書の内容を確認しています。

これだけであれば、特に問題はありませんが、06年の「再見直し」の際に新たに付け加えられた項目があります。それが「市民会館の意見」。これが選考に大きな影響を持ちます。

市民会館館長が書いた記述に基いて、入居選考委員会が最高30点までの点数を付与。従来の基準による点数との合計により最終的な入居選考を行っています。

畑中博・住宅課長は「住宅困窮の度合いについて数値にあらわれない状況を、地域住民を把握している市民会館に書いてもらっている」と述べますが、市同和行政に詳しい関係者は「意見を書く欄は空白で質問項目など特に書かれていない。何を書くのかは館長の判断になる」。館長によって数値に現れない生活実態を書く場合もあれば、旧同和関係者であるか否かなどの情報を書く可能性もあります。この懸念を裏付けるように上野昇一同和・人権啓発課長は取材に答えて「部落差別に関する記述は当然。そうでなければうちの課が書く意味がない。法律はなくったが、まだ部落差別はあるというのが高知市の考え方だ。堂々と書くように新しい館長には話をしている」と述べています。

ブラックボックス

「部落差別を理由にした加点や恣意的な選考が入り込む余地があるのではないか」との問いに畑中課長は「あくまでも住宅の困窮度をみて公正に選考している」と述べますが、「市民会館の意見」を受けての配点は最高30点というだけで、具体的な判断基準のないブラックボックスです。

さらにこの点数を決めている選考委員会の委員は全員が市幹部(02年までの選考委員会には県住宅課長、市議、民生委員など市役所外のメンバーも多数入っていた)であり、恣意的な運用に歯止めをかける保証がないのが実態です。

不可解なのは「市民会館の意見」の内容を、応募者本人が知ることができないこと。4月にある市民が本人が応募した入居選考に関する文書を開示請求したところ、得点部分は開示されたものの(写真下参照)は、「市民会館」の意見は非公開。仮に応募者が旧同和関係者であるかを市民会館側が書いていたとすれば重大な人権侵害になりますが、現状では何が書かれているかは分かりません。(2008年5月25日 高知民報)