2008年4月13日

連載 続・高知市同和行政の今
M「差別発言」なぜ高知市に集中? 

県人権課が公表した「差別事象一覧」から 高知市の中学校が並ぶ
県人権課は平成19年度の県下の同和問題にかかわる「差別事象」の集約結果を公表しました(18年3月から19年2月まで)。公表された資料によると「差別事象」の総件数は45件。内訳は落書き6件(道の駅や居酒屋のトイレや学校の黒板などに賎称語が書かれていたというもので行為者は不明)、発言が39件(38件が生徒によるもの)となっています。

「差別事象」は、行為者不明の落書きと生徒の発言ばかりで、かつてのような深刻な部落差別の実態はなくなっていることが読み取れます

部落解放同盟の暴力的な「確認糾弾」路線、高知市で今なお続く不公正な同和行政への批判、年齢の高い層に根強い封建的な偏見などが混ざり合って、県民の中に同和問題への忌避意識や複雑な思いが存在していることは否定できませんが、それは「部落差別」とは次元の異なるもの。とりわけ年齢が低くなるにつれ偏見は消滅しているのが現実であり、もはや同和問題の「差別事象」を行政が集約すること自体が意味を持たなくなってきています。

8割が高知市内の学校

県下の「差別事象」で突出しているのが高知市の教育現場。45件のうち38件(84%)までが高知市内の小中学校からの報告となっています。他の教育現場からは宿毛市の小学校が1件、高校で5件であり、「同和教育」に最も熱心に取り組んでいる高知市教委のもとで、最も「差別事象」が発生するという皮肉な現象がおきています。

県教委人権教育課に、この種の報告提出を義務付けているのかと問うと、「報告は求めていないし、様式もない。ただ学校の実態を把握するため、何かあれば報告してもらうようにお願いはしている」と、やや不明確ではあるものの、報告を求めているわけではないとの回答。報告している側の高知市人権教育課の吉岡潤課長は「問題意識を持っている教師からの提起と考え県に報告している」。

高知市の発生件数の中で圧倒的なのが中学校で、「休み時間にベランダで生徒Aが○○と発言した」という類の報告が羅列されていますが、現場の受け止めと数字には、かなり温度差があります。

「生徒の発言は相手にダメージ与えることができそうな言葉として使っているだけで、部落差別といえるようなものではない(中学校の管理職)」。適切な指導は要するにしても「差別事象」などとはとらえていないのが現場の実感です。

また高知市以外の中学校からほとんど報告がないのは、生徒に不適切な発言があったとしても、校内の指導で解決し、わざわざ「差別事象」にしたてて報告することをしていないからだと思われます。

発達途上の生徒に不適切な言葉を授業で教えておきながら、生徒の発言を懸命に集約して報告するという「自作自演」のようなことがなぜ高知市教委で今も行われているのでしょうか。事務局に「同和」専門に担当するセクションが存在し、学校で「差別発言」があれば課長が毎回のように部落解放同盟事務所に出向く高知市教委の時代錯誤的な体質の産物といえます。(2008年4月13日 高知民報)