2008年3月16日

連載 続・高知市同和行政の今
J老朽化進む旧同和住宅 

もうじき解体工事が始まる潮江公営住宅
これまでの高知市同和行政の中で大きな比重を占めてきた同和向け市営住宅ですが、今後の高知市の住宅政策を考えていくうえで、同和向け住宅の扱いは重要な問題です。

高知市の旧同和地区にある市営住宅は約2200戸(市内全市営住宅の約5割)で2つのタイプがあります。

@「改良住宅」 かつての被差別部落に特徴的に見られた密集した不良住宅や狭い道を改善するために、住宅地区改良法に基づいた整備事業によって、立ち退きなどで住居を失った住民への補償的意味合いの強い住宅

A「同和公営」 所得の低い住宅困窮者への住宅提供を目的にした福祉的要素の強い住宅。

これらの住宅には1970年代前半に建てられたブロック造りの2階建「簡易耐火」、鉄筋4階建ての中層耐火が多く、老朽化がすすんで1戸あたりの床面積が40平方メートル程しかない住宅もあります。4階建ての住宅にはエレベーターがないため、高齢者が生活するには厳しいものがあります。

公募の方法

高知市住宅課は2008年度予算に「潮江・南河ノ瀬公営住宅」を新築する予算を計上(09年度にまたがった事業)しています。予定では08年5月から潮江の旧住宅を解体。09年11月に鉄筋コンクリート5階建(42戸、一部4階、エレベーター付き)の新住宅を建設します(南河ノ瀬は廃止)。

取り壊される住宅の前身は「同和公営」(潮江30戸、南河ノ瀬10戸)でした。新住宅の位置づけについて畑中博・同住宅課長は「同和住宅という考え方ではない。一般の市営住宅を建てるもの」と回答。同和行政を根拠付ける法が失効して6年経過している中で、「同和住宅ではない」という考え方は当然です。

そこで大きな問題になるのが、入居者の募集方法。旧「同和公営」は公募情報を広報「あかるいまち」には載せず、旧同和地区内だけに配布される「市民会館便り」だけしか載せていませんでした。旧同和地区を特別扱いする情報操作によって、住宅にいくら困窮している市民でも、地区外に住んでいれば、募集がある事実すら知ることができないという極めて不公平な状態です。新しく「一般の市営住宅」として建てられる住宅に、このような不公正な募集方法が引き継がれることは許されません。新住宅の募集についての畑中課長とのやりとり。

−−新住宅の公募の方法は?
畑中 公募の方法は未定。募集方法については「館だより」等でお知らせする。
−−一般の市営住宅なのだから当然「あかるいまち」で広報すべきだ。
畑中 未定だ。
−−エレベーター付きの新築住宅を旧地区だけしか募集情報を流さないなどということをしたら強い批判が出る。
畑中 来年の11月には決める。今は未定ということで理解してほしい。

新住宅の立地場所は交通の便もよく、スーパーや保育所もすぐ近く。新築でエレベーター付きとなれば、入居希望者が殺到することが予想されます。新築される住宅が、「同和公営」から通常の市営住宅として本当に脱皮することができるのか。募集方法の帰趨は、今後の高知市住宅政策の行方の鍵を握る問題として注目されます。

これ以外の旧同和向け住宅の建て替え計画については「まったく未定(同住宅課)」。旧同和向け住宅は、全市的に一斉に建てられたものが多く老朽化が同時進行ですすんでおり、既存住宅の廃止や集約化が避けられない状況も垣間見えます。高知市が管理する公営住宅の5割を占める旧同和向け住宅の今後。市政にとって極めて重い課題になっています。(2008年3月16日高知民報)