2008年3月9日

連載 続・高知市同和行政の今
I同和行政の"遺物" プール 

周囲に田園がひろがる高知市春野福利厚生プール
同和行政を根拠付ける特別措置法が平成13年度末で失効して6年。高知市には、いまだに「同和」を冠する課が存在し、実質的に特措法時代と変わらない「同和行政」が温存されています。これまでの連載では高知市同和行政の4本柱@「市民会館」、A「児童館」、B「同和4団体」への随意契約による仕事保障、C旧同和向け市営住宅入居の特別扱いについて紹介してきましたが、今週からは、この他に高知市が抱える同和行政の「遺物」とでもいうべき課題をレポートします。

旧春野町弘岡下地区。住宅と田畑に囲まれた表通りから見えない奥まった場所に「高知市春野福利厚生プール」があります。25メートルの大プール、幼児用の小プール、シャワー施設、更衣室など一般的な小学校にあるプールと同規模のもので、旧春野町が同和対策事業として同和地区住民の福利厚生を名目に昭和62年に建設。使用料は無料。7月1日から9月10日まで、13時から21時まで開設されていました。

1月の高知市と春野町の合併以降プールを管理している高知市教委スポーツ振興課によると、19年には2000人の利用があったといい、維持管理のコストは(監視人の賃金や水道代、電気代など)およそ年間100万円。

合併にあたり市役所内部では、プールの管理をスポーツ振興課か同和・人権啓発課のいずれにするのかという議論がありました。議論の結果、同和行政が現状より膨れあがることを回避するため、一般対策として引き継ぐべきということになり、スポーツ振興課が管理することに。

尾原徳重・同課長は「うちが引き取ったからには、一般の市営プールとして扱う。特別扱いはしない。既存の市営プールとのバランスを考えて大人150円、子供100円の料金を支払ってもらうことなる」。同和対策から脱却して一般対策として扱い、利用にあたっては適切な受益者負担を課すという考え方は、理にかなうものと言えますが、実際には簡単ではありません。

料金徴収により生まれるコスト増をどうまかなうのか。「自動発券機を置くか、管理する人を雇うのか。これから検討する」(スポーツ振興課)。コスト増をわずかな料金収入でまかなうのは容易でなく、かといって使用料を屋内の温水プールより高額にするわけにもいかず、無料のままのほうがトータルコストがかからない可能性すらあります。

これまでの同プールの利用実態について春野弘岡中市民会館では「利用者の大半は子供で大人はあまりない。子供だけでの利用は禁じていたので、親がついてきて周囲で見ている程度だった」。有料化されれば、屋内の温水プールであればともかく、この種の屋外プールに大人がわざわざ泳ぎにくることは考えにくく、さらに子供の利用が激減することが考えられます。

では無料化を継続すればどうなるか。なぜ特定の地域だけに市営プールがあり、さらに無料なのかという市民に納得してもらえる理由付けをしなくてはなりませんし、毎年払い続けなければならない維持管理コストに加え、安全面の責任も重大。プールは他用途に転用することも困難で、地元住民組織に払い下げることも考えられません。

スポーツ振興課では21年度からこのプールの管理をアウトソーシングする方針を打ち出していますが、そもそも人口数百人の地区に小学校並の規模のプールを設置したこと自体に無理がありました。同和行政の「遺物」は高知市政に重くのしかかっています。(2008年3月9日高知民報)