2007年1月21日

連載 高知市同和行政の今
G児童館(2)

  長浜児童館の広々とした学習スペース

「市民会館」と同様に、「児童館」で提供されるサービスは、基本的にすべて無料です。

一般の放課後児童クラブでは、保護者は月額7300円の負担金を支払わなければなりませんが、定員オーバーで入所できないケースも多く、実質的な無料学童保育と化している「児童館」とは、大きな差があります。

「児童館」は「どこに住んでいても利用できる」という建前になっているものの、旧同和地区内にしか館が存在せず、館の情報は「市民会館」や「子ども会」以外に伝わりません。大多数の保護者は「児童館」についての情報をほとんど持っていないのが実態です。

小学校低学年の児童が放課後に、自宅から遠く離れた地域へわざわざ出向いてまで館を利用することは難しいことから、現実的には特定地域だけは、実質的に無料で「学童保育」が利用できるという二重構造が生まれています。
 
■「学力保障」

「児童館」は子供に「遊び」を提供する児童厚生施設であり、「学校教育を補完する場ではない」ということが建前になっています。当たり前のことですが、公教育においては、課題のある生徒への対応が、生徒の居住地や先祖の「旧身分」によって違いがあってよいはずなく、指導が必要な生徒には、わけ隔てなく対応しなければなりません。

しかし、実際には「児童館」のある特定地域だけで、放課後の学習指導、定期テスト前の試験対策勉強会(中学生)が取り組まれています。「特定地域だけで勉強を教えるのはおかしい」という指摘に対して市教委は、「勉強は学校でやるべき。『児童館』で勉強は教えていない」、「テスト対策はやっていない」と回答しますが、実際に「児童館」を訪問して指導員と話をすれば、どこの館でも一様に「勉強」に取り組んでいることは隠しようがありません。

「児童館」に現在子供を通わせている保護者から「もっと勉強を教えてもらいたい」という声が出るのは、ある意味当然であり、部落解放同盟高知市協は市長部局同和対策課所管の「児童館」と「子ども会」を、教育委員会に移すことを要望しています。市人権教育課も「できるならウチにとりたい」、同和対策課も市教委へ移すことを否定せず、来年度実施されるとみられる同対課・人権啓発課・市教委人権教育課の仕事の見直しと組織整理の中で、「児童館」が市教委に移されることはほぼ内定しており、教委に所管が移れば、「勉強」や「進路保障」が一層強化されることが考えられます。

学習面や生活指導上の課題を抱える児童生徒の比率が、過去の経過から旧地区の線引き内に相対的に多いということはあり得ることですが、絶対数では旧地区外の児童が圧倒的に多いことは人口比からみても明白(市民会館や児童館が活動対象エリアにしている旧同和地区の人口は32万市民の8%しかない)です。

児童生徒、学校が抱える困難はオールジャパンの問題であり、旧地区の線引きは関係ありません。課題のある生徒に対応するなら、居住地の如何に関わらず同じでなければならないのは当然であり、同和対策特別措置法が失効した今日、旧地区の線引き中だけで実質的な「無料学童保育」や試験対策を行う理由がどこにあるのでしょうか。市が 「児童館」や「子ども会」の「進路保障」を強めれば強めるほど、圧倒的多数の保護者の不公平感が高まり、矛盾を一層深刻にしていくものでしかありません。