2006年12月10日

連載 高知市同和行政の今
E市民会館(3)

前号まで紹介してきた「市民会館」への過剰な人員配置、数々の無料サービス提供とともに、本来住民が自治活動として取り組まなければならない課題を「市民会館」が長期に肩代わりしてきたことから、「市民会館」の存在が住民の自治と自立のマイナス要因になっている実態があることは問題です。

高知市内の旧同和地区では、住民の自治組織である町内会や自治会が最近までほとんどなく、自治活動が非常に遅れていました。ある地区では、昨年から街路灯の電気料金が市負担から住民負担に変わったことから、住民側の受け皿をつくるために「市民会館」が強力に主導して住民組織を立ち上げましたが、「防犯灯管理組合」の域を出ておらず「町内全体の美化や環境保全、ゴミの出し方や犬の飼い方等、住民の相互意識の醸成が必要」(館の事業方針より)というように、まだまだ課題が多いのが実態です。

何か身近に問題があると住民自身が動くのではなく、まず「市民会館」に電話。常駐している館職員がすぐ肩代わりして対応するというようなケースが目立ちます。これでは自治・自立が育成されないのも無理はありません。同和行政に詳しい市幹部にこの実態をぶつけると、「市民会館の肩代わりが住民の自立を妨げているという指摘は否定しない。確かにそのような課題はある」と話しました。

「格差是正」を題目に取り組んでいる「同和対策」の中で、最も比重が高く多大なコストとマンパワーを投入している「市民会館」が、格差解消と自治意識の桎梏(しっこく)になってしまっている実態は皮肉としか言いようがありません。

11館の「市民会館」が活動対象にしているのは約8000戸(館広報の配布数から推定)。居住人口は約2万人と考えられます。破綻寸前の財政状況の中で、市民サービスを次々とカットしている高知市の現状で、32万市民のうちの特定地域の線引き内2万人だけを対象に、旧態依然とした「同和行政」が漫然と続いている実態を市民が広く知ることになれば、強い批判が出ることは必至です。

10月30日に行われた「解同」市協の対市交渉を受けての市の考え方をまとめた文書には、「市民会館を閉めることは考えていないが課題もある。あり方・活性化を組織の中で十分議論する。機能の集積も検討する」とされており、来年度にむけて朝倉地区など極めて隣接している館の職員を若干減らすなど、一定の手直しをする可能性はあります。しかし、高知市行政の「解同」の言いなりに屈服する体質は、依然として続いており(市営住宅問題で「解同」市協に迫られて選考基準を変えた問題に如実に現れている。この問題は後に詳報)、抜本的な改善策が実行される可能性はまだ低いと言わざるをえません。

今後の「市民会館」の方向性としては、@隣接した館の統廃合、A現在のふれあいセンター(旧市役所支所)並の非常勤中心の職員配置、B「事業」は市が行うのではなく地元の自主性に任せるなど、通常のコミュニティセンターとしての活動にシフトしていくことに加え、同和対策課の廃止、人権啓発課、人権教育課の整理統合などによって20人以上の人員を減らすことができます。この人員を、課題を抱える小中学校への市単独加配教員の増員や、少人数学校実現のための教員配置の財源にあてることができれば、多くの市民の切実な願いに応えることができます。

「市民会館」を、市民が納得できるものへとソフトランディング(軟着陸)させていく計画を持つことは市行政の責任です。数年後には打ち切られる可能性の高い国の補助金をあてにして、漫然と「市民会館」を継続させている今の高知市の姿勢は、非常に無責任なものと言わなければなりません。