2006年11月26日

連載 高知市同和行政の今
C市民会館(1)

朝倉総合市民会館
高知市には現在11の「市民会館」があります。「市民会館」という名からすると、どこの自治体にでもある、広く市民一般に開かれた施設のように聞こえますが、高知市の「市民会館」は「隣保館」と同義語で、同和対策としてつくられた経緯があります。

そもそも隣保館とは、教会や学生による、生活に困窮している人々を救済するセツルメント活動から生まれたもので、困窮の原因は部落差別に限ったものではありませんが、60年代から始まる同和対策事業の中では、高知市に限らず隣保館=同和対策として位置付けられています。

高知市の「市民会館」は60年代に隣保館という名で建設され、その後、福祉館へと改称。さらに部落解放同盟朝田派が「部落民以外は差別者」という部落排外主義に走り、暴力的な確認糾弾闘争を大規模に展開する70年代半ばには「解放会館」として「解同」の「窓口一本化」の拠点に。79年からは現在の「市民会館」という名称になり今日に至っています。

バランス欠く配置
 
2006年現在、11館ある「市民会館」の年間管理費は約2億7200万円。経費としてもっとも大きいのは23人配置されている正規職員の人件費で年間約1億8200万円。施設管啓発理費が3400万円、会館のソフト事業として行っている「活動事業」費に1000万円、老朽化した会館の外装の補修に3000万円などの支出も目立ちます。

このうち国からの補助金が約1億円。残りの1億7000万円は市の単独負担や借金で埋めていることになります。さらに市役所組織としては同和対策課に7人、人権啓発課に7人の職員を配置しており、こちらの人件費はあわせて年間約1億円になります。

朝倉地区や河ノ瀬地区では、「市民会館」が非常に接近して立地しており、隣の館が数百メートル先に見えているような状況があります。高知市の財政は破綻直前と言われ、危機的な状況にもかかわらず、根拠法が失効した今日も、漫然と「同和対策」のために膨大なマンパワーと市民の税金を投入しているのが高知市の実態です。

廃止した市役所支所に代わる施設として量販店に置かれてきた「窓口センター」でさえ、統廃合や縮小が検討されている状況の中で、著しくバランスを欠く「市民会館」への人員配置は、市民の納得を得られるものではないでしょう。「今のような状態をいつまでも続けるわけにはいかない」、「廃止・縮小すべきだ」という声は市職員の中からも少なからず聞こえてきます。

10月30日に行われた部落解放同盟高知市協の対市交渉では「市民会館」の市直営維持を求める「解同」に対して、執行部は「直営を維持しながら国の動向も注視し、地域のコミュニティセンターとして機能を集積し、効率的、効果的運営を図りたい」と回答。統廃合や人員縮小したいという思いはにじみ出ているものの、具体的に統廃合等を検討している様子はみられません。同和行政に精通している市幹部によると「国の補助金は続いてもあと2年」という認識。数年後には現状の態勢が維持できなくなることは確実ですが、同和対策課は「将来の態勢については特に検討はしていない」と特段の見通しを持っていませんでした。