2007年7月8日

連載 高知市同和行政の今
29仕事保障(2)

平成19年2月、高知市人権施策推進本部が発表した「同和対策関連施策の見直しについて」には随意契約による仕事保障について以下のような記述があります。

「仕事保障は同和問題の解決を図っていく上で重要な課題である。(中略)今後とも仕事保障の取り組みは必要」、「団体への随意契約による就労対策を可能な範囲で継続」、「基幹的施設については原則競争入札とするが(略)、地域内の生活水準が一定改善されるまでの間、随意契約を継続する」

これまでの連載で明らかにしてきたように、高知市が想定している「地域」とは、旧同和地区の線引き内一般のことではありません。

高知市は旧同和地区内に居住しておりかつ「市民会館」が同和関係者と認定している7048人(平成18年夏、新たな認定はしておらず、増えることはなく年々転出や死亡で減っていく)という固定化され閉じた属人グループを「地域」と称しており、この「地域」と高知市全体の「格差」が続く限り「随契」による仕事保障が必要であるという論立ですが、新陳代謝のない閉じた属人グループは高齢化が進むばかりで、高知市全体と比較して、「格差」が解消せず拡大していくのは当たり前であり、「地域の格差」は「随契」の理由に成り得ないものです。

また同和団体は「地域」を代表するものではなく、実際に清掃や警備に従事している労働者には同和地区外に居住している人も雇われており、高知市が主張する「地域」の就労対策とは噛みっていない実態もあります。 雇用対策は行政の重要な分野であり、取り組む際には全市民を対象とした市民合意のルールにおいて実施されることが重要です。

危機的な財政状況の中、市役所内での随契を入札に変えるべきという圧力もあって同和団体の仕事保障としての「随契」総額は減ってきていますが、平成19年度には清掃の分野に限っても総額約2億5000万円もの巨費が随契による受注。うち64%が「解同」系の高知市労働事業協会への発注となっています。

市民合意のもとでの特命随契一般が否定されるべきものではありませんが、現在の「部落差別」を理由にした特命随契の継続は、関係者の自立を妨げ、市民の不公平感により同和問題への偏見を増幅させる要因にもなっています。「部落差別」を理由にした「随契」は直ちに終了し、透明性の高いルールを確立することが当然の時代の流れでしょう。

「随契」を入札に変更した場合、最低賃金を下回るような価格で落札され、労働者の権利が侵害さていれることが随契継続の理由に持ち出されることがありますが、入札方法の改善(受注価格だけでなく、労働者の賃金や労働条件にも配慮するプロポーザル方式にするなど)で対応できる問題であり、「部落差別」による特命随契の理由になるものではありません。(7月8日 高知民報)