2007年6月10日

連載 高知市同和行政の今
26 家庭支援推進保育加配

19年度 高知市の保育士加配の状況
民間保育園
上街、丸の内、南街、聖園マリア、江ノ口、愛育会、ポッポ、潮江双葉、港孕、ふくし、のぞみ、高須、あざみの、ひなぎく、朝倉くすのき、鴨田、鏡川、おさなごの、浦戸

市立保育園
田渕、下知、宮前、石立、河ノ瀬、一宮、秦中央、朝倉、若葉、神田みどり、長浜、南海、介良西部
人数は各園1人。太字は旧同和保育所。
南海には国費の加配がさらに1人入っている。

旧同和保育所への保育士加配は、平成14年の「同和行政見直し」で廃止され、旧同和地区の線引きとはかかわりなく、園児の中の課題のある家庭の比率により、すべての保育園を対象にして保育士を加配する「家庭支援推進保育加配」になりました。

保育士加配は、生活保護(A階層)、住民税非課税(B階層)、一人親世帯などの占める割合が一定の水準を超えた場合に実施されています。平成19年度の加配保育士の配置は旧同和保育所に10園11人(民間園含、国の加配1人を含む)、旧同和保育所以外の一般園に22園22人。旧同和保育所全園が該当していますが、その2倍以上が一般園に配置されていることになります。

旧同和保育所の現状を知るために5月末、ある公立保育園を訪ねました。この園は高知市の外れに位置し、交通の便が悪いこともあり、園児は定員を大きく割り込んでいます。

広々としたスペースで園児はゆったり保育されており、空き部屋も目立ちました。「家庭支援」による加配保育士は高知市から1人、国から1人配置されており、年齢別保育を実施。保育士1人あたりの園児数は、高知市内の大規模園の2分の1程度で非常に恵まれた環境にあります。

園内に「部落解放」や「同和」などを意識させる特異な掲示物は特に見あたらず、ごく通常の保育をしている様子が伝わってきます。

園長に「他園と比して条件が恵まれすぎではないか」と質問すると、「確かに広い園なので子どもが減ってゆったりしている。同和関係者であるかどうかは関係なく、園児と家庭の状況に応じて保育士を加配をしてもらっている。課題のある子どもは他園と比べて多い。やはり問題は親で、衝動的に子どもをどなったり、食事を与えないなど問題がある家庭が増えた。育児相談にのり、家庭訪問をして『親育て』をする必要がある」と話していました。

若い世帯の子育て能力が喪失し、「親育て」が必要な家庭の増加は、旧同和地区に限らず全市的に大きな問題になっていますが、旧同和地区には、世帯の収入が相対的に低い層を対象にする市営住宅が約2000戸(全市営住宅の45%に相当)も集中していることもあって、旧同和保育所に課題を抱える子ども・家庭が集まりやすい傾向は現在も存在しています。

前号で紹介した入所の際の「属地・属人」への特別の配慮などは論外ですが、園児・家庭の状況に応じての公平な加配保育士の配置は市民の理解を得られるもので、「同和行政」終結と一般行政への移行をすすめていくうえで方向性を示しているものといえます。

高知市が市長を先頭に「同和行政はまだまだ必要」というスタンスに立っている中で、保育行政の分野で前進が可能になったのは、民主的な保育労働者の長年にわたる職場での運動、保育所問題は市民の関心がきわめて高く、市民と密着している保育の現場で、あまりにおかしなことはやりたくてもできないという側面もありました。「同和行政」終結のために、現場の労働者の運動、市民に実態を知らせることがいかに重要であるかを示しています。