2007年6月3日

連載 高知市同和行政の今
25 元同和保育所 属地属人なら今でも入所優先

   高知市内には9つの公立元同和保育所が存在している

かつて「同和保育」は高知市の同和行政の重要なポジションを占めていました。

土佐山村、鏡村との合併以前の高知市内の高知市立保育所は全部で23園ですが、うち同和保育所は9園。占める割合は約4割に達していました。

民間、県立保育短大付属園と併せて12の「同和保育所」(公立10、民営2、県立保育短大は廃止)を拠点に、@高知市同和保育基本方針に基づく「教育」、A行政の責任による入所にあたっての一定の配慮、B同和関係住民の保育料減免、C保育士の同和加配が行われてきました。

しかし平成14年度からは同和行政を根拠付ける関連法が失効したために、高知市でも「同和保育」の大幅な「見直し」が行われました。

その主な内容は@同和保育基本方針の廃止、A保育士の同和加配を廃止し、対象を課題を抱える園全体へと拡大、B保育料の同和減免の廃止(既入所児は4年間の段階的減免)。

この「見直し」を見る限り、旧態依然とした「同和保育」から大きく改善されたことが見て取れます。事実、保育士の加配については、入所児童の実態を踏まえて、旧同和保育所以外の民間保育所により多く人員が配置されるなど、顕著な改善が見られます。

その一方で岡崎市政が、未だに部落解放同盟に従属的で「部落差別は依然厳しく同和行政を引き続き継続する必要がある」というスタンスであることから、保育行政の細部には「同和保育」の残滓を引きずっている面が見られます。その典型が入所判定での特別扱い。2006年10月30日に行われた部落解放同盟高知市協議会と高知市との交渉の場で、市保育課は以下のような重大な答弁をしています。

「子どもたちの保育所への入所(属地・属人で同和保育所を第一希望にした場合)等にあたっては、児童の健全育成や就労を支えるという観点からの配慮を継続している」

旧同和保育所に入所を希望する親が「属人」(同和関係者)で、かつ現在「属地」(旧同和地区の線引き内)に居住していれば、今でも優先的に入所できるよう特別に配慮しているのです。親の状況、子どもの実態と関係なく「属地・属人」であれば入所が優先されるというのは「逆差別」そのものです。市保育課に「配慮」の実態について取材しました。以下はやりとり。

−−旧同和関係者の入所への特別な配慮は今もあるのか。
保育課 今でも入所判定の際に、同和関係者が同和保育所に入所を希望した場合、これまでの経過もあり、保育の必要性のポイントに加点している。
−−入所希望者に「属人」であるかどうか、市が質問しているのか。
保育課 それはできない、申し出があった場合だけ。
−−どうやって「属人」であるかを調べるのか。
保育課 こちらでは分からないので「市民会館」に問い合わせて判断してもらっている。

そもそも「同和保育所」や「属地・属人」などという概念は現在存在せず、行政が市民を同和の線引きで区別するなどということがあってはなりませんが、実際には保育所の入所に際して、一部の者だけ身分調査をして優先入所させているのです。最も公平でなければならない入所の判断で、このような不公平が存在していることを多くの市民が知れば、批判が巻き起こることは必至でしょう。高知市の公立保育所は市民の人気が高く、入所を希望してもなかなか入ることができない園も多くあります。市のある幹部職員は「こんなことをやっているとは市民には絶対言えない」と心情を吐露しました。