2007年5月13日

連載 高知市同和行政の今
22 促進学級(1)

18年度に実施した「促進学級」の児童館への聞き取り調査結果
(派遣教員数は1日あたりの人数)
朝倉三町 朝倉中から2〜3人
南横 朝倉中から2〜3人
西山 西部中から1〜3人
宮寺 西部中から1人
豊田 西部中から1〜2人
河ノ瀬 城西中から2人
小石木 城西中から2人
小高坂 城北中から3人
一宮 一宮中から2人
介良 介良中から2人
長浜 南海中から3〜4人

「促進学級」をご存知でしょうか。数10年前、当時劣悪な状態に置かれていた被差別部落の児童生徒の学力を保障するために始まったもので、被差別部落に教員が出向き補習を行う「学級」のことです。

この「促進学級」。昔話ではなく、高知市では今も続いている現在進行形の話です。

平成9年度(1997年)「同和行政の概要」(高知市発行)に「進路保障は、同和教育の総和と言われ、中でも、子ども達の学力を保障することが課題となっている。特に地区児童生徒の一人ひとりのつまづきや理解度を的確に把握し、その結果をチームティーチングや子ども会の教科の個別指導等、個々の児童生徒に応じた具体的な実践に生かす」と書かれています。「地区の子ども」を他の児童生徒と区別して、「進路保障」のために特別の底上げ策を講じることを目的にしています。

2006年10月30日、部落解放同盟高知市協議会と高知市との交渉で市教委は「学校教育には依然厳しい差別の実態が残されている」、「(旧解放)子ども会では一人ひとりに学力を身につけさせ、将来の進路保障へつなげていく取り組みが求められている」と発言しており、「地区の子ども」を区別して底上げするという考え方は今も変わっていません。 中学生を対象にした「促進学級」について具体的に実態を見ていきます。

■生徒に苦痛も

高知市内に11ある「児童館」で昨年度実施された中学生対象の「促進学級」について調べました。

「促進学級」は11館すべて、中間・期末のテスト前のそれぞれ3日間、校区の教員が「児童館」に出向いて行われていました(聞き取り内容は別項)。

なぜ特定の地域だけに教員が出向いて加力指導するのかについての説明は生徒や保護者にはなく、日程の通知も大半の館は旧解放子ども会内部だけ。旧同和地区外の保護者は、このようなことが今日も続いていることをまったくと言ってよいほど知りません。

中三生の40代の母親に「促進学級」のことを話すと「それっておかしくないですか?そんなのはずっと昔のことだと思っていた。本当に今もやっているのか。それならうちの地区でもやってほしい」。

生徒の実態とかみ合わない「促進学級」は、生徒の心を傷つけ人権侵害ともいえる状態を引き起こしているケースも見受けられます。中学生の多くはクラブ活動や塾に忙しく、「児童館」に行くことはまずありません。「館」では人数がなかなか集まらず人集めに苦戦しているのが実際で、指導員が声かけをしたり、中には生徒に「○○先生が勉強教えてくれるから」と地区外の友人を連れてくるように誘わせる場合もあります。

指導員が生徒に「促進学級」の勧誘をさせることは、事実上「部落民宣言」を強要させるに等しく重大な問題があります。また中学生にもなれば友人に自分の地区だけが特別扱いされていることを知られることに苦痛を感じる場合もあり、生徒にこのような苦痛を与えている「促進学級」は直ちに取りやめるべきです。

課題を抱えた生徒にはどの地域に住んでいようと、親や祖父母の旧身分がどのようなものであろうとも等しく底上げをするのが、学校と教育委員会の使命であり、加力指導をやるならば放課後、学校でやればよいことです。特定の地域に教師が出向く時代錯誤的な「促進学級」は生徒に苦痛を与え、偏見と不公平感を広げるだけです。