2006年11月12日

連載 高知市同和行政の今
A市民を差別者扱い

人権に関する県民意識調査報告書より(平成15年3月発行)
高知市は現在の同和問題について「依然として厳しい」と述べますが、何をもって、このような認識を持っているのでしょうか。

2001年度末の法失効後は、同和地区に線引きをして線の内外で行政の対応が異なることはあってはならないというのが建前であり、線引きをした「実態調査」も実施されなくなっています。

唯一同和問題への県民の意識について、まとまったデータが存在しているのが、平成14年9月に県が実施した「人権に関する意識調査」。設問は@同和問題を知った時期、同きっかけ、A同和地区を意識する時、B地区出身者であることが分かった場合の対応、C結婚問題などについて。この設問への回答がまとめられています。

高知市は「基本的に14年の県の調査以外の意識調査のデータは持っていない」(市人権啓発課)ことから、「厳しい」という認識はこの調査から導き出されています。結婚問題について具体的に見てみましょう。

消極的?
 

平成14年に高知県が実施した意識調査によると 「子どもの同和地区出身者との結婚について『結婚を認めない、 家族が反対すれば認めない、仕方がない』等の反対又は消極的意見が51・8%と高率であり、 依然として差別意識が根強く残っていることがうかがえます。このように同和問題の完全解決には至っていません」(高知市人権教育・啓発推進基本計画)と述べ、高知市は市民の過半数に差別意識が根強いと、まるで市民を差別者扱いしていることが分かります。

ではこのベースになっているデータはどのようなものなのでしょうか。

別図に示した円グラフがそのデータです。「子どもの意思を尊重する」が最も多く48・2%、続いて「子どもの意思が強ければ仕方がない」が30・2%。約8割が「認める」というデータです。このグラフのどこを見れば「市民の差別意識が根強い」と読みとれるのでしょうか。

「消極的」な意見には、部落解放同盟の確認糾弾闘争などへの批判を含んでいることも十分考えられます。また調査には独身者も回答しており、「分からない」という回答があってもまったく不思議ではありませんが、にもかかわらず高知市は、「分からない」、「子どもの意思が強ければ仕方がない」を、すべて消極的であると断定して市民の差別意識の根深さとして強調。一般対策の中で「同和行政」を推進していく根拠にしていますが、ベースとなるデータは、このように恣意的なものでしかありません。市人権啓発課に、この分析について質問しても「見解の違いとしか言いようがない」とまともな返答はありませんでした。