2007年4月15日

連載 高知市同和行政の今
R同和教育の現状(1)

 A中で使用された「教材」 拡大画像は写真をクリック

これまでの連載では主に@市民会館、A児童館とこども会、B同和向け市営住宅、C平成18年に高知市が実施した「調査」について報告してきましたが、今回からは高知市の同和教育の実態についてレポートしていきます。

2007年1月、高知市のある公立A中学校の2年生の保護者から、奇妙な教材が使われた「人権教育」が行われているという訴えがあったので調べてみました。

その教材とは「差別に立ち向かう」というタイトルがついたB4のプリントで、導入は「ハトよ、今日はパンはないよ」というおじいさんのセリフ。このおじいさんは高知市追手筋の藤並公園で2人の女子高校生に話しかけます。以下のやりとり。

おじいさん 「おまえらどこぜ?」
女子高生 「A市です」
おじいさん 「A市のどこ?」
女子高生 「Bです」
おじいさん 「Bゆうたら−−か。あそこはようない。犯罪をする人が多い」
女子高生 「そんなことはありません。おじいさんの考えは間違っています」
おじいさん 「あそこらあは身分が卑しい。人種が違う」
女子高生 「今は身分なんてありません」
おじいさん 「あそこの人は目をみたら分かる。毛深いから分かる。そのうちおまえも毛深うなる。だから結婚はできん」
女子高生 「私たちは結婚します。おじいさんの考えは完全に間違っています。部落がどうして作られたか知っているのですか。私たちは学校で習って知っています・・・」

などと続き、最後に女子高生はおじいさんの住所を聞き出し、「きっと、またお話に行きますからね」と結ばれています。

教材の文面だけでは、何を言いたいのかが分かりかねるものですが、女子高生が最後に「部落」に言及していることから、どうやら同和問題をテーマにした「教材」であることが読みとれます。

A中の保護者からは「娘は何のことかさっぱり分からなかったようだが、すごく嫌な気分がしたと言っていた」、「子供が『こども会』の人たちが、こんなこと言われているみたいと話していた。どうしておかしな偏見を学校が植え付けるのか」などという声が寄せられています。

この教材の出典を調べてみると、平成7年(1995年)に高知県教委が発行した「同和教育指導資料」に掲載されていたものであることが分かりました。この教材はかつての高知県の同和教育界では有名で、1980年代半ばに県立高知追手前高校の生徒が遭遇したという実話を元に、当時同校の教員で部落問題研究会を指導していたN氏が中心となって教材化されたものでした。

今年1月のA中の授業では、生徒に対し20年も昔の話であるという説明はされず、さも現在進行形であるような印象を与える形で持ち出されています。

県教委人権教育課の指導主事に「現在もこの教材を使っている学校があるようだが」と問い合わせると、「まさか、それはないでしょう。ずっと以前に見た記憶はあるが、そんなに古い資料を今頃使うはずないですよ」と絶句しました。