2007年4月8日

連載 高知市同和行政の今
Q同和関係者特定する「世帯票」に固執

 調査のイメージ。黒が地区外からの転入者、白がリストに掲載された同和関係者。リスト
掲載者は年ごとに減少していく

高知市が今回の調査に使った同和関係者7048人の「属地属人リスト」の元になるデータベースが「市民会館」に今も置かれている「世帯票」です。

かつて「世帯票」は同和行政の中で、国の補助金を受けるための基準として隣保館に置くことが義務づけられていました。市が認定している同和関係者の個人施策や相談を受けた記録が記され、ある市関係者によると「地区外に嫁いで姓が変わっても属人であることが分かるように系図まで書かれていた」というもので、現代版「人別帳」、「部落民名簿」ともいうべきものです。

しかし平成13年末に同和対策の根拠法が失効し、「特別対策」は終了。14年度以降は隣保館の運営要綱から「同和問題の速やかな解決に資することを目的とする」という文言が削除され、同和関係者を特定する「世帯票」の根拠もなくなりました。以後「市民会館」では「世帯票」の更新作業は行っておらず、鍵のかかった金庫に厳重に保管されています。

市が「同和関係者」を特定する法的根拠もない中で、「世帯票」を持ち続けること自体が重大な人権侵害ではないかと廃棄を求める指摘に対して西森孝・市民生活部長(3月当時)は、「世帯票は地域住民の相談事業に必要」と回答。しかし、前述したように「市民会館」では「世帯票」の更新はしておらず、「どこの隣保館も処分に困っている(市同和行政関係者)」のが現実であり、「世帯票」を持ち続ける理由にはまったくなっていません。

「世帯票」を廃棄することができた時に初めて行政が「同和」の「呪縛」から脱することができます。「世帯票」にこだわり続けることは、高知市行政の後進性の象徴的現れといえます。

高齢化?

西森部長は3月12日の3月市議会で、「調査」結果について以下のように答えました。「5年前の調査と比べて所得や生活保護受給率は変化していないが、高齢化率が高知市全体より進んでいる」、「依然として地域間格差が解消されていないことを指し示すもの」と答弁していますが、これは事実を全くゆがめるものです。

「属地・属人リスト」のベースは「世帯票」ですが、これが更新されていない中で、「属地・属人」が新たに増加する要素はありません。また収入が一定ある若い世代は地区から出ていくケースが多いことから、年を重ねるごとに数が減少していくだけの人為的に固定されたグループでしかありません。

新生児の誕生がカウントされていく高知市全体より、固定化した「属人グループ」の高齢化が進行するのは当たり前であり、そこには何の意味もありません。

また、この「調査」では、5年前に調査した人物から死亡や転出などを除き、常に同じ人物を追跡調査していることになります。この5年、経済状況が急速に悪化している中で、同じ対象者が5歳年齢を重ねても、所得や生活保護受給率に大きな変化がなく改善されていないことも充分考えられます。

地区内のごく一部にしか過ぎない「属地・属人」7048人を、バーチャル的に寄せ集めて「地域」を創造しておき、高知市の全体の平均値と比べ「地域間格差がある」と言っても調査の意味をなしていません。市幹部職員からも「これでは統計調査とはいえない」という調査手法への疑問の声が多く出されています。