2007年3月25日

連載 高知市同和行政の今
O「属人調査」で格差偽装(1)

「地域」の格差を調べたというが実態は全く違う
高知市が昨年実施した旧同和地区内と地区外を比較し、旧地区の低位性を強調して「格差」が依然解消されていないと結論付け、「同和行政」継続の根拠に使われた「調査」の過程で、市が「地域住民リスト」を作成していたことが判明しました。

この「調査」は、「市民会館」が同和関係者として認定している「属人」を積み上げた7048人の高齢化率、総収入、生活保護受給率、年金受給状況について調べたというものですが、その調査方法について西森孝・市民生活部長が3月市議会の宮島和夫市議(共産)の質問に答え、以下のように述べています。

@今回の調査は行政目的達成のため、特定の個人を識別できない形で、個人の利益、権利を侵害する恐れのない、数値的な統計事業として使用することを目的として、高知市全体と「市民会館」が把握している会館の周辺地域住民対象に比較した。

A所得の算定方法は市民会館が把握している会館周辺の地域住民リストと、所得年金の情報を電算によりマッチング処理し、数値的な統計情報として取り出した。

B所得・年金・生活保護については、平成13年度の調査とほぼ同様の割合を示しているが、高齢化については高知市全体が約2ポイント増に対し、「地域」が4ポイント増加しており、高齢化はより進んでいる。

Cこの結果は依然として地域間格差が解消していないことを指し示すものであり、引き続き残された課題解決に向け取り組んでいかなければならないと考える。

「説明する必要なし」

高知市が、対象を特定する法的な根拠も、市民への断りもなく、勝手に同和関係者であるとカウントして「地域住民リスト」、実質的な「部落民リスト」をつくり、その低位性を調査したことは、市民への人権侵害につながる大問題です。そこで同和対策課に、「リスト」と調査方法について取材しましたが、「地域住民リスト」には個人名は記載されていない、「市民会館」には対象の個人名は分からないと回答しました。

リストを作成した「市民会館」が個人名は分からないという説明は支離滅裂ですが、個人名を把握せぬまま、どうやって年齢、収入、生活保護などの情報をマッチング処理したのかと問いかけても、同和対策課長は「とにかく統計としてつかんだだけ」と繰り返し、さらには「そこまで説明する必要があるのでしょうか」と回答を拒否。いくら聞いても個人を識別せぬままで、どうやってマッチング処理したのかという明確な回答は得られませんでした。

データの抽出方法や、サンプルの選定方法を明らかにできない「数字」が統計として意味を持たないことは自明の理。「同和行政」を継続する唯一の根拠は、このようないい加減な「数字」でしかありません。

また市は「調査」は「地域」の実態を調べたかのように言っていますが、実態は全く違います。調査対象は、「市民会館」周辺の旧同和地区内に居住する市民の中の一部「属人」だけです。

高知市が言う「地域」とは、市が「地域住民リスト」に書き込んだ「属人」グループの中での高齢化や経済状況の調査に過ぎず、地区外から多くの若い世代が転居して混住が進んでいる地域の実態を反映しない、「偽装」ともいうべきもので、統計としての意味は持ちえないものです。