2007年3月18日

連載 高知市同和行政の今
N「格差」を考える 

高知市が18年度に行った旧同和関係者の低位性を明らかにするための「調査」結果では、高齢化率、総所得、生活保護受給率、年金受給状況について市全体とは依然格差があるとしています。

市は数値の分析の方法について詳細な方法を明らかにしておらず、数値の信頼性への疑問がぬぐえませんが、仮にこの数字を正しいものとしても、現存する「格差」は19年度以降も「同和行政」を継続していく根拠にはなり得ないものです。

市同和対策課によると、調査は現在旧地区内に暮らす「属人」を抽出カウントしています。

旧地区内で育った経済力のある若い世代は、結婚して地区外に住居を新築するケースが多くみられるなど、収入が高い層ほど地区から出ていく傾向が強くあります。結果として、地区内には収入が低い高齢者層が残ることになるのは当然といえます。

さらに旧地区内には2000戸の同和向け地域改善住宅が存在しており、「属人」7048人の多くが、この同和住宅に居住しています。公営住宅には所得が一定以下の層しか入居できません。また同和向け住宅は入居募集情報の公開を、旧地区内だけに絞っており、実態的に旧地区住民しか応募できないため、地区外からの転入は人為的に制限されています。このようなことから、旧地区内に低所得層が固定化する傾向があるのは、何ら不思議ではありません。

大切なのは「格差」ではなく、「格差」解決のために、市が継続しているこれまでの同和行政、@「市民会館」、A「児童館」と「子ども会」、B同和向け住宅の特別な募集方法、C随意契約による仕事保障が有効であるのかどうかということ。

平成14年3月29日、国が同和対策の特別対策を終了するにあたっての総務大臣談話は以下のように述べています。

「 国、地方公共団体の長年の取組により、劣悪な生活環境が差別を再生産するような状況は今や大きく改善され、また、差別意識解消に向けた教育や啓発も様々な創意工夫の下に推進されてまいりました。このように同和地区を取り巻く状況が大きく変化したこと等を踏まえ、国の特別対策はすべて終了することとなったものであり、今後は、これまで特別対策の対象とされた地域においても他の地域と同様に必要とされる施策を適宜適切に実施していくことになります」。

高知市では、住環境や道路の幅員などハード面の整備事業は1980年代に基本的に完了していますが、それ以降も「同和行政」を延々と継続してきたにもかかわらず、「格差」がなぜ今もあるのでしょうか。いくらこれまで同様の「同和行政」を続けても、これ以上の格差を解消することはできないし、逆に「同和行政」が新たな格差を再生産・固定化しているとことを示しています。