2007年2月11日

連載 高知市同和行政の今
J地域改善向け住宅(1)

 高知市内には約2000戸の旧同和向け住宅がある
高知市の同和行政は@「市民会館」、A「児童館」、B仕事保障、C旧同和向け住宅の特別な配慮という四本柱で実施されています。「市民会館」と「児童館」についてこれまで紹介してきましたが、今週からは同和向け住宅=地域改善向け市営住宅(同和向け公営住宅、改良住宅)の実態についてレポートします。

平成14年2月の日付が入った「同和対策関連施策の見直しについて」という文書があります。出したのは高知市同和対策推進本部。13年度末に同和対策を根拠付ける特別措置法が期限切れを迎えるにあたり、これまでの高知市の同和対策事業を総括し、当面残存させる事業の整理をしたもので、現在実施されている高知市の「同和対策」の土台になる重要な文書です。

「地域改善向け住宅 『同和地区に1年以上居住するもの』とする入居資格を削除する。ただし建設の経緯を踏まえ、今後においても一定の措置を講ずることとする」。 この「一定の措置」が現在の市の住宅行政の中で実施されている「同和行政」の根拠となる文言です。では実態はどうなっているのか。

同和対策の根拠となる法律が失効したことにより、行政が同和地区、地区外を区別することは表向きはできなくなりました。ということは一般の市営住宅であっても、旧同和向け市営住宅であっても扱いは同じでなければならないはずですが、実際の扱いは全く異なっており、地域改善向け住宅は、旧同和地区の住民だけしか利用できない実態が現在もあります。

広報で「線引き」

14年の「見直し」では、それまでの「同和地区に1年以上居住しなければ入居の資格がない」という規定が削除され、一見門戸が全市民に開かれたように見えますが、実態は全く異なります。その「カラクリ」とは。

一般の市営住宅の場合は市民に全戸配布される広報紙「あかるいまち」に、募集要項が掲載されますが、地域改善向け住宅は「あかるいまち」への掲載はなく、「市民会館」が旧地区内だけにに配布している「館だより」だけしか掲載されません。地区外の市民には地域改善向け住宅の募集に関する情報は全く知らされないのです。広報される市民の数が大きく異なることもあって、一般の市営住宅の募集時の競争倍率は概ね20倍にもなりますが、地域改善向け住宅では約2倍程度と、非常にアンバランスな状態が生じています。