2005年2月6日
集中連載 高知県・高知市誘致「オーシャンテレコム」コールセンターって何?D
求人広告の記載 労働実態と乖離激しく
社会保険未加入と書かれた求人票
2005年に入ってから高知市丸ノ内の住民に「ビルから叫び声が聞こえるが何だろうか」という噂が立ちはじめました。確かに城西公園東側の道路を歩いていると一日に何回も頭上から大勢が長時間叫ぶ声が聞こえてきます。ビルとはオーシャンテレコムが入っているそれのこと。「○○(個人名)!必ず契約がとれる!」「ハイ!」と言うようなことを連続して大声で叫ばせて暗示をかけているようです。この手の「社員教育」は「光通信」系列会社の得意とするところで「体育会系」と言われる由縁です。
オーシャンテレコムの事務所には「集団成功主義、実力主義、元気主義」と書かれた「社訓」。電話で売り込みをかけるテレホンアポインターの頭上には、1日の獲得契約数を示す緑色のボールを置き一目で成績が分かるようになっています。
■問題多い求人広告
オーシャンテレコムが配布している求人チラシ
オーシャンテレコムは昨秋以降、繰り返し新聞折り込みによる求人チラシ広告を配布。ハローワークでも求人を募集していますが、広告の内容はあいかわらず問題の多いものです。
賃金 昨年9月に配布したチラシには「月給20万円」としか書かれていませんでしたが、それ以降のチラシでは給与「内訳」が載るようになりました。その内容は、基本給70000円、営業手当20000円、職級手当25000円、営業特別手当85000円で計20万円。「残業あり」という記述が小さくありますが20万円が残業代が込みなのか否かはチラシからは分かりません。
一方、ハローワークの求人票には営業特別手当85000円は残業分であると明記されています。最低賃金を計算する場合、残業分を除外する必要がありますから、給与部分は11万5000円。推定時給は611円の最低賃金を少し上回る額になります。
少なくても求人チラシには、求人票と同様85000円の営業特別手当は残業代であり、20万円というのは残業代込みと書かなければ職業安定法42条(広告の求職者に誤解を与える記述の禁止)に抵触する可能性があります。
仕事内容 求人チラシ、求人票にはオーシャンテレコムの仕事の内容について「市場リサーチ、クロージング業務、電話での案内。飛び込み営業ではない」と明記されています。この記述ではテレアポをやらされるとは読みとれません。県・高知市・高知新聞がオーシャンテレコムの実態を正しく伝えないことと併せ、求職者が異なったイメージで応募する誤解を与えるものです。
社会保険 オーシャンテレコムが昨年12月にハローワークに出した求人票では社会保険(労災、雇用保険、厚生年金、健康保険)が未加入になっています(加入予定と記載)。同社の開業は昨年10月。労働者を雇用しながら無保険で見切り発車していたことになります。その一方で求人チラシには「各種保険完備」と記載。チラシには「保険完備」だが入社したら「加入予定」では虚偽記載です。社会保険加入は事業所に課せられた義務。「オーシャンテレコム」は当然事業所が負担しなければならない保険料の支払いをサボっていることになります。県・高知市が誘致する企業が脱法状態で開業することが許されるのでしょうか。まともな検討もしないままの拙速な誘致の結果です。
県は2月にもオーシャンテレコムの設備や通信費への補助を開始。来年度は県、高知市が人件費を含めた多額の予算を(5年間で5億円規模を想定)計上することになります。未曾有の財政危機の中、多くの問題を抱える企業に巨額の公金を支出することが果たして県民のためになるのでしょうか。
「オーシャンテレコム」の閉鎖体質、行政の情報収集の不十分さもあり、不明な点も多く、もう少し時間が経過しなければ明らかにならない点も多くあります。高知民報では情報公開制度も活用しながら、今後もしっかり監視していきますので、情報がありましたらお寄せください。(おわり)