2005年1月9日
集中連載 高知県・高知市誘致「オーシャンテレコム」コールセンターって何?@
実態はテレアポセンター 最高10億円の巨額助成制度
誘致を報じる高知新聞
「光通信」(重田康光会長・本社東京都)が大旺建設と共同出資して、昨年10月から高知市丸ノ内に開設したコールセンター「オーシャンテレコム」が営業開始して3カ月たちました。2004年12月県議会では同社の施設整備助成金1482万円余の補正予算が可決。今年1月にもオーシャンテレコムの申請により県から公金が投入されることになります。高知市と県が「雇用拡大」の目玉として誘致した「コールセンター」の明らかになりつつある実態をレポートします。
昨年9月7日の高知新聞夕刊1面に「高知市にコールセンター」と大見出しが踊りました。記事には岡崎誠也市長と光通信の青年幹部の握手写真、「情報通信サービス大手の光通信」、「電話や電子メールを通じた顧客対応の拠点となるコールセンター」、「50人雇用、数年後150人に」などと書かれていました。
9月高知市議会で岡崎市長は「情報通信サービス業の大手・光通信が地元企業と資本提携し、来月中旬にも本市で操業を開始することを決定。コールセンターは商品の問い合わせや受注、クレーム対応などの業務を他の企業等から受託し多数のオペレーターによるサービスを提供する」と説明。12月県議会で橋本大二郎県知事も誘致するコールセンターは「顧客への電話サービスの拠点」との認識を示しました。
コールセンターはここ数年で地方都市の雇用の花形として注目され、先行した沖縄県に続けとばかりに全国で誘致合戦が白熱化。後発の高知県・高知市の助成制度は「他県より遅れていたのを他県並に頭を並べた」(県企業立地課)ものといいますが、家賃・設備費・改修費・通信費等を半額助成、雇用費として1人当たり年間50万円(常用雇用の場合)など1社に5年間で最高10億円まで助成される破格の手厚い助成制度となっています。
「光通信」の実態
「オーシャンテレコム」を理解するには、親会社である「光通信」の体質を正確に把握することが避けて通れません。高知新聞や岡崎市長は「光通信」を「情報通信サービス業の大手」と呼び、「光通信」という社名とも相まって最先端のハイテク産業であるかのようなイメージをふりまいていますが、実態とはかけ離れたものです。
光通信の創業は1988年。資本金100万円の第二電電の固定電話回線販売代理店としてスタート。社名の光は重田康光会長の名前から。90年代の携帯電話市場の急速な拡大に乗って系列の販売店HIT・SHOPを拠点に無料電話機配布、クジで当選したと言って携帯電話を契約させるなど強引な販売で猛烈に販売数を伸ばし急成長しますが、2000年に携帯電話会社からのマージンを詐取するため大量架空契約が発覚。強引な販売方法に苦情も後を絶たず、重田氏の株価操作疑惑がマスコミで報じられ株価は大暴落。経営危機に瀕します。
その後、飽和状態の携帯電話市場から力を抜く代わりに「コールセンター」を使った中小企業向けのコピー機等の販売にシフトして業績をV字回復させます。販売しているのはシャープ製のコピー機。コピー機は携帯電話に比べてマージンが大きく、店舗を構えないテレアポ(※)と低い人件費を武器に市場で競争力の弱いシャープ機を安値と強引なセールスで販売。実にシャープ製コピー機の5割を「光通信」関連が販売しているとまでいわれています。
「光通信」や関連会社(アイ・イーグループ、コール・トゥ・ウェブなど)は、社員の年齢が極めて低いのが特徴です。平均28歳、役員でも33歳程度。関連会社に20代社長を続々と抜擢しているといいます。同社の大量雇用は有名ですが、裏を返せば大量の離職者が出ており、入社しても大半がすぐに辞めているのが実態です。
「光通信」の実態はハイテク産業とはほど遠い過酷なテレアポセールス業、「オーシャン・テレコム」は「顧客対応の拠点」ではなく「テレアポセンター」と呼ぶのが実態を正確にあらわしています。
県や高知市は最大10億円にもおよぶ莫大な公金を投じるからには、対象企業の経歴、業務内容を詳細に吟味しなければなりません。今回の誘致は高知市主導で始まったものといえますが、後発であるが故にまともな検討もなく飛びついた感は否めず、その弊害が県下で表面化し始めています(以下次号)。
※テレアポ テレホンアポイントの略で相手構わず電話をかけ商品やサービスの勧誘する商法。