2005年1月16日
集中連載 高知県・高知市誘致「オーシャンテレコム」コールセンターって何?A
全国に広がるテレアポ拠点
岡崎誠也高知市長は「オーシャンテレコム」の業務内容を「カスタマーサポートやヘルプデスクなどの顧客サポート業務を大手企業から請ける業務」と市議会に説明し、橋本知事も「顧客対応の拠点」との認識を示しましたが、これはまったく「光通信」と「オーシャンテレコム」の実態を反映していません。
「光通信」はコピー機・電話回線・保険などをテレホンアポイント(※以下テレアポ、相手構わず一方的に電話をかけ勧誘する商法)でセールスし、店舗で携帯電話を販売している会社であり、「オーシャンテレコム」はテレアポの拠点。一口に「コールセンター」といっても、電話とパソコンがあるだけのブラックボックスであり、業者によってまったく内容が違います。
一般的にはコールセンターには「受信型(インバウンド)」と「発信型(アウトバウンド)」の2つのタイプがあり、インバウンド型は岡崎市長が説明したようなタイプ。アウトバウンド型とはテレアポタイプのことです。
コールセンターの先進地・沖縄県にはNTT、IBMなどの大企業がアウトソースしたカスタマーサポートや電話受付などインバウンド型のコールセンターが数多く進出しています。主なコールセンターの企業名と業務内容を見てみましょう。
NTT−DO(104番号案内や電話受注)、CSKコミュニケーションズ(テクニカルサポート)、沖縄コールセンター(情報処理サービス)、野村ファンドネット証券、シティバンク、KDDI(電話料金請求の問い合せ等)、オリックス(リース契約対応)、IBM(顧客サポート)、PCテクノロジー(NECパソコンのテクニカルサービス)、アメリカンホーム保険、エプソン(顧客電話対応)、セシール(通信販売対応)、AIU保険会社(問い合せ対応、契約者に対する継続案内)、ワウワウ、かんぽコールセンターなど。沖縄にも「コール・トゥ・ウェブ」(コピー機や電話回線販売)など「光」系のテレアポ業者も一部進出していますが、大半は大企業のインバウンド型コールセンターで占められています。
■似て非なるもの
大企業のアウトソースは峠を越え、インバウンド型コールセンターの需要にはかげりが見えています。このような中で高知県をはじめ後発自治体が「コールセンターなら何でもOK」と助成制度を競って作り、その制度を最大限活用したのが「光通信」でした。高知市の他に山形市、酒田市、金沢市、高岡市、宮崎市、青森市、盛岡市、室蘭市、飯塚市、倉吉市、米子市、鳥取市、松山市、松山市、高松市などの地方都市に爆発的な勢いでコールセンターを開設しています。
「光通信」のコールセンターが「顧客サポート業務を大手企業から請ける業務」であるならば、インバウンド型の需要が落ちこむ中で、広範な地域に急激かつ大量にコールセンターを作る必要はありません。一部の地域に集約したほうが効率的なはずです。
この背景には大都市では「光通信」の「評判」がすでに知れ渡っているということがあります。企業イメージにとって重要な顧客対応を「光」系列にアウトソースするような大企業はまずありません。「体育会系」と言われる過酷なテレアポは求職者にも敬遠されている実態があります。
一方で地方ならば事務所は空ビルを用意してくれ、設備費・通信費・ただでさえ安い人件費には税金から多額の補助、若年層の求人は容易、撤退してもペナルティなし(あってもわずか)で歓迎されるのですから、「光通信」がテレアポセールスの拠点を安く広げていくうえでこれほどオイシイ話はありません。
「コールセンター」と名が付いてもインバウンド型とテレアポ型は「似て非なる物」。迷惑を顧みず執拗な電話勧誘を繰り返すテレアポ業者に、県・高知市が財政危機の中、最高10億円もの税金を投入する制度に果たして県民の支持が得られるのでしょうか。雇用拡大のためならばもっと有効な方法があるはずです。
既に誘致先行県ではコールセンターなら何でもよいというわけではなく、「どのようなコールセンターをターゲットにするか」を吟味する議論がされていますが、県・高知市に「光通信」の体質や業務内容をしっかり吟味する姿勢は感じられません。もっとも「光通信」コールセンターを歓迎しているのは高知に限らず後発県はどこも同じですが、問題が明らかになった時に、投入された税金の責任は誰が負うのでしょうか。(以下次号)