2016年5月1日

桂浜「道の駅構想」の怪 R年間利用者72万人の虚構
 
赤がアクセス道路予定地、40210を「前面道路」にしている(国土地理院電子地図を使用)
高知市都市建設部が4月12日に公表した浦戸地区への「道の駅」最有力案は、昨年5月、同部がコンサルタント会社に調査を発注した時点で同部が腹案として持っていた「青写真」とアクセス道のルートも同一で、ほぼ重なる。

約1200万円もの公金を投入し(市と国で折半)て完成させた「調査報告書」であるが、当初から言われていた、@和住工業関連会社が所有するゴルフ練習場を高知市が買い取る、A浦戸大橋の南端からゴルフ場まで稜線上に同市が道路を付けるという下馬評そのまま。結論が先にあり、後から理由を付けたような印象が強い。
  
前面道路はどこに?

「道の駅」とは,交通量の多い幹線道路に面して立地され、ドライブの途中でトイレ休憩に立ち寄り、軽い食事や土産物を購入するというような利用をするものである。

すなわち「道の駅」は最終目的地ではなく、ドライブの途中で一時休憩する場所として存在する意義がある。

この「調査報告書」の肝となるのが、「利用者数年間72万人」であるが、この数字について検討してみたい。

「調査報告書」は、「道の駅」に立ち寄る車の台数を推計する手法として、県内の他の「道の駅」の前面道路の交通量と利用者実績の割合の平均から割り出した係数を使って算出するやり方をとっている。

その手法自体には一定の妥当性があるのだろうが、問題は浦戸地区の「道の駅」計画地には「前面道路」が存在しないこと。

今後、浦戸大橋の南端から稜線上に引かれるであろうアクセス道を約1・5キロメートル走った奥に、「道の駅」は位置することになる。

現在、予定地にはゴルフ練習場があり、そこには西側から市道が通じているが、生活道であり「道の駅」のアクセス道としては想定されていない。

それでは「調査報告書」が72万人の利用者を導き出した「前面道路」とはどこのことなのか。

「調査報告書」を読み進めていくと、その地点は、長浜「花海道」から浦戸大橋に至る県道14号「春野赤岡線」上の浦戸大橋の南詰の旧料金所跡であることがわかった。

この地点で県土木部道路課が平成22年に交通量を実測調査をしている(高知県道路交通センサス交通量調査40210観測地点、観測日は平日12時間調査)。この実測値に昼夜率を乗じて推計される24時間交通量は上下線合計で18854台(小型16866台、大型1988台)となっている。

「調査報告書」は、この18854台を「前面道路」の交通量として採用している。40210観測地点を浦戸大橋北詰であると図示するなど混乱も見られるが、県道路課に確認したところ、観測地点は別図の通りの地点である。

周辺の観測地点のデータとあわせて推測すると、高知市中心部をバイパスするために浦戸大橋を渡ることを目的とした県内在住者や業務用車両が通行の大部分を占めているのが40210観測地点の交通量であると考えられる。
 
立寄率4・3%

 「調査報告書」は、「前面道路」の交通量18854台に4・3%を乗じたものが「浦戸道の駅」に立ち寄る台数であると断定したうえで、さらにすぐ近くにある桂浜公園駐車場に駐車した車の「9割近くは来ると考えられる」(桂浜公園の実測値は1日1741台)などとして、さしたる根拠も示さぬまま上方修正し、1日2000台の車が「道の駅」に立ち寄るとした。

この2000台に、乗用車1台あたり2・2人、バス1台あたり24人などを乗じて「年間72万人」をはじきだしている。

だが、どう考えても「前面」とはいえない遠く離れた地点を、「前面道路」にして利用者数を計算したり、「桂浜公園に入った車の9割近くが立ち寄る」などという、根拠のない楽観、手前勝手な考え方が随所に目立つ。次回は立ち寄り率「4・3%」の根拠と、妥当性について検討をくわえてみたい。(つづく)(2016年5月1日 高知民報)