2016年4月24日

桂浜「道の駅構想」の怪 Q事業費31億円 公設民営で
 
上は「報告書」が最有力とするアクセス道路(赤)と「道の駅」の位置、下は現在「道の駅」にあるゴルフ練習場
桂浜「道の駅構想」の立地可能性や事業手法について民間コンサルタント業者に委託していた調査報告の結果が4月12日に公表され、高知市が進めようとする計画の全容がほぼ明らかになった。報告書が「最有力」とする案は、これまで本連載が指摘してきたように、和住工業に関連するゴルフ練習場用地や山林を高知市が買い上げ、浦戸大橋南詰めからゴルフ場まで約1・4キロメートルの「アクセス道路(市道)」を作る方針。事業方式は公設民営で、投入される公費総額は31億円以上が見込まれる。当初から指摘していたように、「道のないところに無理やり道をつけ、『道の駅』をつくるという本末転倒な計画」という批判そのままの内容になっている。内容は以下。

アクセス道路 浦戸大橋の南詰からクレッセント・ゴルフ場入り口までの1430メートル、片側2・75メートル2車線、歩道2・5メートル(片側だけ)を稜線上につける。計画交通量は1日2000台、制限速度は時速30キロ
メートル。

概算事業費は7・1億円。保安林の伐採を少なくするため、擁壁をつき道路を張り出す構造を想定するが、保安林の伐採も必要となるために解除申請が必要。

道の駅本体 和住工業関連会社が経営するゴルフ打ちっ放し場用地約2・2へクタールを利用。道の駅、飲食、直販所、加工場、物産店などを設置。駐車スペースは小型車220台、大型30台、年間利用者72万人、雇用45人。

事業費は約24億円(アクセス道路を含めると31億円)。アクセス道路や施設のハード整備の経費は税金でまかなう公設民営方式で、施設の運営や管理を指定管理方式によって民間業者に委託することを想定している。

この計画で最も問題になるのは「採算性」。報告書の詳細については後に検討していくが、最大の弱点は年間72万人の利用者数が前提になっていることだろう。

「72万人」の前提が崩れれば、計画のすべての根拠が失われることになる。

現状で桂浜公園に入り込んでいる観光客は「年間70〜80万人」(高知市商工観光部)。それと同数程度の観光客が、「道の駅」を利用することになっているのだが、推定の根拠は薄弱でいい加減。全国各地で失敗を重ねた無駄な公共事業と共通する、過大な需要を想定した甘い計画の典型である。

全国に知られた県下屈指の景勝地である桂浜には、観光客を引きつけるだけの吸引力がある。

一方、幹線道路に面しておらず、約1・5キロメートルのアクセス道の奥に新たに作る「道の駅」に、桂浜公園と同じ利用者が入ってくるという目論見は通常は考えにくい。よほどインパクトのある集客力のある施設が設置されなければ難しいことは誰が考えても分かることである。

高知市がどうしてもこの場所で「道の駅」をやるというのであれば、これからの時代に通用する、厳しい視点で費用対効果をチェックしなければならないのは当然だが、高知市にも報告書にも、そのような姿勢は欠落しており、やる前から失敗するのが目に見えるような、成功を真剣に考えているのか疑わしい計画になっていることには驚かされる。予想利用者人数について、次回以降さらに検討していくことにする。(つづく)(2016年4月24日 高知民報)