2016年1月17日

桂浜「道の駅構想」の怪 H遅れこむ仁井田産業団地
 
仁井田産業団地の予定地、大半が和住工業関連会社の所有地だ
南国市の十市パークタウン(以下パークタウン)の裏山が周辺住民の合意なしに削られたため、原状回復の方法で対立が生じ、どのような形で決着するのか、不透明さが生じていることのあおりを食らったのが、高知市が重点課題として進めている仮称・仁井田産業団地である。

産業団地用地として高知市側が買収しようとするのは大部分が和住工業と関連企業が所有する土地であることは既に紹介したが、南海トラフ地震を見越して浸水しない地域に企業の移転用地を確保することは間違っていないし、地権者が特定企業であるからと即問題があるとまでは言えない。

一方、浦戸地区では約9割を和住工業関連企業が所有する土地に「官民連携」と称して市行政が道路を引き、「道の駅」を作る計画が具体化されようとし、同時並行的に仁井田地区でも同じ構図が進んでいることは、あまりに特定企業と市政の距離が近すぎる印象は拭えない。

市長選前の昨年10月中旬、岡ア誠也・高知市長に「どうして土地利用が和住関連ばかりなのか」と聞く機会があったが、「(和住が)海岸近くに土地を持っているので結果的にそうなった」という答だった。

仁井田産業団地はこの種の事業では珍しい高知市単独事業で、市商工観光部のある幹部は「県にも入ってほしかったのだが・・・」と本音をこぼす。一方で県中枢幹部のT氏は「県と高知市で開発中の一宮団地の先行きも見えない中では付き合えなかった」と高知市の前のめりとは対照的な姿勢を示す。

現在、仁井田産業団地事業は予定地の土地形状が決まらない中で調査・設計が遅れこみ「26年度にやるはずの基本設計ができていない。何とか27年度中にはすませたい」(産業団地整備課)。

高知市の土木行政に詳しい同市幹部K氏は「南国のトラブルは尾を引くのでは」と一宮団地が遅れ込む中で、仁井田団地でもトラブルが発生したことを懸念する。

裏山を切られたことを発端にパークタウン住民が、これまでさほど関心を向けていなかった隣接する産業団地に強い関心を払うことになった。今後は騒音や環境への要求レベルのハードルも高くなってくるだろう。

また、仁井田産業団地予定地は市街化調整区域で、開発のためには住民の議論と納得を得た地区計画を決定することになっており、周辺住民とのトラブルは解決しておくのが前提になる。仁井田団地が抱えた紛争は、岡ア市政の喉に刺さる小骨のような存在になっている。(つづく)(2016年1月17日 高知民報)