2015年11月8日

桂浜「道の駅構想」の怪A 土壇場で書き換えられたマスタープラン
 
上がパブコメ案、下が完成版。「高台を利用した土地利用」を図示して挿入している 
 
 
上がパブコメ案、下が完成版。「高台の土地利用」、「防災道路」が書き加えられている 
桂浜「道の駅構想」の下地に、2014高知市都市計画マスタープランの「長浜地域のまちづくり構想」に記載されている「高台の土地利用」、「防災道路」というキーワードがあることを前号で紹介した。

同プランは都市計画法に基づく高知市のむこう約20年間の土地利用の基本方針を定める重要方針で、対象は高知市全域におよぶ膨大なものである。

大年邦雄・高知大学教授(当時、故人)を委員長にした13人の有識者による策定委員会が2011年11月9日、12年6月6日、13年3月1日、同11月25日の計4回の会議と、市民へのパブリックコメントを経て決定し、14年3月7日に岡崎誠也市長に提出している。

高知市都市計画課のウェブサイトからパブリックコメントにかけられた最終案を確認していると、おかしなことに気がついた。

桂浜「道の駅構想」のキーワードである「高台利用」と「防災道路」の記載が、最終案にないのである。

パブリックコメントで出された意見を反映して案を修正することはありうることだが、パブコメ終了後に策定委員会の会議は開かれていない。パブコメ終了から10日後には完成したプランが市長に提出され、提出セレモニーが市長室で開かれている。

体調を崩していた大年委員長の判断で長浜地域での「高台利用」、「防災道路」を挿入したのだろうか。謎は深まるばかりで、プラン策定の事務局を担当した同都市計画課に確認の取材を入れたところ、驚くべき事実が判明した。

「プランに抜かりがあったので手直しした。都市建設部内の判断で、委員には諮っていない」(谷沿新也課長)。

桂浜「道の駅構想」のキーワードである「高台利用」と「防災道路」は、事務局が最終段階で策定委員に無断で書き換えて挿入していたのである。

「高台利用」と「防災道路」は、特定業者が浦戸地区に所有する山林の利用を前提としたもので、該当する土地を図示させて、桂浜「道の駅構想」とフォーカスさせている。露骨すぎるこの事実をどう考えればいいのか。不可解というほかない。

さらに谷沿課長に、プランの他地域でもこのような「手直し」はあったのかと確認すると、浦戸の例だけだと回答した。

同マスタープラン策定委員を務めたA氏は「議論の中心はコンパクトシティについての考え方だった。長浜地域の高台利用のことが話題になった記憶はない」と述懐する。それもそのはずで、プランは高知市全域の膨大な土地利用を対象にしており、わずかな回数の会議で、地域ごとの細かい議論までできるはずがない。

また高知市の元幹部職員Y氏は、委員に無断で市側が書き換えるやり方について、「市職員の感覚としてありえない。こんなことをやっていたら、住民の公共事業への信頼を失ってしまうのではないか」と述べた。

これほど大胆な「禁じ手」を使うことは現場の課だけで判断できることではない。深いところから市政を歪める力が働いたと考えるのが自然だ。マスタープランは、なぜ土壇場で書き換えられてしまったのか。(つづく)(2015年11月8日 高知民報)