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初登庁後、幹部職員に訓示する尾崎知事(10月30日) |
3回目の当選を無投票で決め初登庁した尾アは10月30日、報道陣の質問に答え3期目に臨む姿勢について以下のように述べた。
「建物をつくるのに例えれば、1期目は材料を揃えていた時期。2期目は土台作り、さらにはより大きな建物にむけて設計図をできる限り骨太なに組み上げていこうとした時だ。3期目は土台に立ち、設計図に基づき本格的に建物を組み立てていく時だと思っている」。
このように3期目の任期を県勢浮揚への総仕上げの任期であると明確に位置づけていたが、同時に尾アは次のようにも述べた。
「正直、そんなに簡単に事が進むのか分からない。様々な問題が出てくるだろう。それを乗り越え県勢浮揚の形が明確になるところまで持っていければと思うが、3期目の任期は4年間。時間がないくらいかもしれない。全速力で仕事をしていきたい」。残り時間の少なさをかなり意識している発言が印象に残った。
■3期12年は一般論
さらに尾アは記者からの「4選をめざすのか」という質問に、「仕事がそれぞれの段階でどこまで進んだのかによる。一区切りついていれば交代することもあろうだろうし、明らかに行き詰まっていてマンネリ化して駄目となれば審判を受けることになるだろう。もし、あきらかに続けていくべき仕事が道半ばということなら、もう1期させていただいたほうがよいと考えるかもしれない。今の段階ではわからない」と回答。
8年前、初当選直後の12月県議会で尾アは自らの任期を「3期12年が限度」と答弁しているのだが、「当時は一般論としてそう言った」と事実上の修正をして、4期目出馬の可能性に触れた。
3期目を終えても尾アはまだ52歳でしかない。4期目が視野にあると考えるのが自然だろう。だが、これから人口減少が急速に進んでいくことが不可避な高知県において、尾アが描くような「県勢浮揚」を県民と共有することは現実には至難の業である。
とりわけ、「TPP体制」が敷かれ、「強い農業」へと日本の農業を根本からシフトしていく大きな流れは、中山間地=条件不利地域での農業と兼業で生活を成り立たせることを目指す尾ア県政の方向性とは明らかに齟齬がある。
「強い農業」とは、言い方を変えれば、競争力の弱い農業はなくなっても構わない、淘汰されてやむなしということである。安倍政権が取ろうとする方向もそれに沿う。要は高知県ごと「不要」と言われているようなものだ。
このような流れの中で、政権の示す枠内だけで立ち回る発想では、「県勢浮揚」の道が見えてくることはない。県民の立場に立ち切り、高知県民を丸ごと切り捨てる国政に、抗っていくしか活路は開けない。尾ア県政3期目は尾ア本人が繰り返して述べているように、文字通り「正念場」である。県民の命と暮らしを本気で守るために知事・尾ア正直が何を考え、何をしていくのかを、しっかりと見定めたい。(N)(2015年12月6日 高知民報) |