2015年12月6日

桂浜「道の駅構想」の怪 E南国市に飛び火した紛争
 
住民に陳謝する橋詰南国市長(10月25日)
10月25日18時、南国市十市の高齢者多世代交流センターは会場を埋めた住民の怒りに包まれていた。

激しく批判されていたのは橋詰壽人・南国市長。「私の判断が間違っていた。撤回する」と何度なく繰り返していた。

住民は南国市緑ヶ丘、十市パークタウン(以下パークタウン)にマイホームを持つ団地自治会員。7月にパークタウンの裏山を住民に説明がないまま、ある民間企業が樹木伐採や山の掘削をはじめたことから騒ぎになった。

山を削った民間企業は株式会社和住工業。地山の所有者は南国市(南国市の市有地)で、和住工業、南国市、パークタウン住民の三者間で重大な紛争になっている。

この日、会場には和住工業側の代理人という設計士の姿があったが、横矢忠志社長の姿はなかった。

11月7日の「高知新聞」に、この件について記事が掲載されているが、肝心な部分が語られていない。

問題になっているパークタウンの裏山は、南国市と高知市の境界に位置し、南斜面は南国市が所有する市有地で、北側の大半は和住工業関連の所有地であるが、この話には伏線があった。

平成26年2月、和住工業の関連会社=和住興産からパークタウンの裏山を買収して太陽光パネルを設置したいとの申し出が南国市にあったが、同市は断っている。

話はこれだけでは終わらなかった。

27年2月にはパークタウンの裏山を削る工事許可申請が和住側から南国市に提出される。津波避難場所をつくるという話がセットになっていた。橋詰市長はこれに許可を出す。「無償で避難場所を設置できるならば、住民のためになると思った」(南国市幹部)。

しかし、和住側が工事を始めたところ「何も知らされていない」と住民が騒ぎ出した。

パークタウンの裏山は北風を防ぐなど団地の環境保全にとって大切な緑地であり、急斜面での樹木伐採は土砂災害を誘発しかねない。そもそも、避難場所をつくるといいながら、住民に説明すらしないのでは反発が出るのは当然だろう(パークタウンは津波浸水地域ではない)。

工事は中断。前述の橋詰市長の「撤回」発言につながっていく。和住工業は、どうしてパークタウンの裏山を欲しがり、削りたがるのか。

この山の北側(高知市側)の和住工業関連会社が大半を所有する山林を切り開いた、すり鉢状の土地は、高知市が単独で推進している仮称・仁井田産業団地計画(約4・5f)の予定地であり、近い将来高知市側に買収される見込みであることと関わりがあるのは容易に想像がつく。

パークタウン裏山を削り標高を下げることで、北側の産業団地側の法面も小さくすることができ、土地の利活用がしやすくなる。

仁井田産業団地は企業の高台移転用地として、岡ア高知市政の重点施策に位置付けられ、26年度から4年計画で実施。29年度には完成する計画で動き始めているが、思わぬ紛争の勃発で計画に影響が出ている。(つづく)(2015年12月6日 高知民報)