2015年11月22日

「連載 尾崎県政の2期8年」 ?天を仰いだ34メ−トル
 
黒潮町の海岸線

高知県政の南海トラフ地震への迅速な対策は、尾崎正直知事の「県民の命を守る」ことに執念を持った強いリーダーシップが原動力になっていることは間違いない。

尾崎県政の優れた側面として、南海トラフ地震対策はもちろん、豪雨や土砂災害に対しても感度が高く、県民の命を守ることに敏感であることがあげられる。

前号で紹介した10月15日に行われた共同インタビューでの、黒潮町の予想津波想定高が34メートルと公表された時のことを回想した部分を紹介する。尾崎の震災対策へのスタンスがよく分かる。

記者 知事を投げ出したくなった時はあるか?

尾崎 ありません。ただ一回だけ天を仰いだというか、これは大変だなと思ったのは「34メートル」を聞いた時。南国市のグレース浜すしの前を車で通過している時、危機管理部長から電話がかかってきて「あさって高知県の津波想定高が発表されますが、34メートルです」という。あの時は唖然としたし、正直なところ切れそうになりました。

34メートルにどう対策を講じればいいのか。経済だ、産業振興だといっても、何もかも全部流れてしまうのではないかと。事実あの時に、進んでいた案件は吹っ飛びましたし。本当にあれは衝撃的だった。

高知県はこれだけ大変なのに、加えて34メートルの津波がのしかかってくるのかと。本当にあの時は大変だと思った。ですが、そうも言っていられない。正面から立ち向かっていこうと仕事をしてきたつもりです。

対策を講じていけば、いろいろ道もひらけてくるもので、避難が大変なのであれば、避難路・避難場所をたくさんつくればいい。1445カ所避難路・避難場所を作り、避難タワーを115基作って、それでも困難であれば、新しい技術を活かしたシェルターなどの対策を講じて、「34メートルにも立ち向かっていける」と、なりつつあるのかなと思っている。

あの時、心配だったのは、多くのみなさんが、いろんなことをあきらめてしまうのではないかということだった。津波避難訓練をやめたという話もあったし、日々が刹那的になり、どうせ津波が来たら死ぬんだと社会全体にあきらめ感が漂うことをすごく心配した。

ですから「34メートルに負けない」という明確な県政としてのメッセージを打ち出していかなくてはならないと思った。シェルター構想はその一つ。絶対34メートルでも生き延びる道はあることを示すことが大事だったと思っている。(N)(2015年11月22日 高知民報)