2015年10月4日

立憲主義の1点で結集を 山口二郎・法大教授
 
参加者からの質問を聞く山口二郎・法大教授
民主党のブレーンとして知られる山口二郎・法政大学教授が9月18日に高知市内で講演し、安倍政治に対抗するため、立憲主義擁護の一致点で日本共産党を含む政治勢力を結集する重要性を提起しました。講演会の主催は連合高知と自治労高知。

山口教授は「60年安保闘争では新安保条約は成立したが、岸首相が退陣し、池田・佐藤政権の国民を食わせるという実利実益で自民党は生き延びた。しかし、安保法が通っても安倍首相は辞めず、改憲をしかけてくるかもしれない」と指摘。

個人が自分の意見を表明する新しい政治文化の出現、自分の意見を述べる主体が育っていることに注目しつつ、「この受け皿になるのは民主党ではうまくいかない。立憲主義擁護のシングルイシューで、共産党を含めた政治勢力を結集すべきだ」と問題提起しました。(発言要旨は別項)

山口教授の発言は連合・自治労という反共産党色が濃い民主党の中核的支持母体に招かれた講演で出されたもので、この翌日、共産党が発表した「国民連合政府の呼びかけ」と符合する部分もあり注目されます。

山口二郎・法大教授の発言要旨 今回の安保法制反対運動を見ていると、みんなが態度を決定する、政府がすすめる法案に「俺は反対だ」と、不利なこともあるかもしれない、特に学生たちに「就職にマイナスになるぞ」とくだらない脅しをする心ない大人もいたが、彼らは敢然と立ち上がり「私たちは反対だ」。差別するようなつまらない企業にはいかなくていいと覚悟を決めている。

自分達が生きる国や地域社会に大事な問題があれば、自分の意見を表明し、他人に働きかけ行動する「公共人」が出現してきたことは、今回の運動の大きな成果だ。ここでスイッチが入ったことは残る、彼らは忘れない。ここからどういう運動を展開してくのか。

60年安保では岸退陣でやれやれ、改憲は遠のいた、自民党も経済成長、実益実利で国民をたらし込んでいった。今は違う。安倍は辞めない。下手すると来年の参院選で本気で改憲を掲げて仕掛けてくるかもしれない。その時こそ、返り討ちにするチャンス。(中略) 

野党結集が必要ということは今回安保法制に反対したすべての人が痛切に感じているだろう。最後は数の力かと。議会で多数を取ることがいかに大事かと感じている。野党の中の本当の野党と隠れ与党がはっきり分かれたことは良かった。安保法制に賛成した連中は相手にしなくてもよい。安倍政権と対決する野党の環境ができてきた。

私は20年近く民主党を政権政党にしたいという一心でいろんなことを言ってきた。今回の安保法制には「断固粉砕でたたかえ」と言ってきたし、実際にその通りにやってくれた。

民主党内には集団的自衛権OKの人もいるが、そこは鎮圧して岡田代表の下たたかってくれた。本当にありがとうといいたい。だが、こういう感覚は私のように民主党の内情を知っていて、ある種の期待を民主党に持っている人間の意見。世間一般は「民主党よくやった」とはなかなか言ってくれない。

内閣支持率は下がっているが、政党支持率はあまり変わっていない。民主党も上がっていない。戦略を考え直さなければいけない。民主党を改革してリベラル路線をしっかりたてることで国民の信頼を回復するという私の路線はどうもうまくいかない。だとしたら、もっと規模の大きい野党再編のような話に踏み出していかなくてはならないのかと最近考え始めた。

まずは参院選の1人区で受け皿をつくる。安保法制に反対する人が心置きなく投票できる候補者を各地で立てる。民主党、社民党、できれば共産党も含めてやるべきだ。人ごとではなく我々も作業に関わっていかなくてはならない。立憲デモクラシー擁護という旗印で新しい政治勢力をたてることにもつなげていく必要があるのかなと思う。(2015年10月4日 高知民報)