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デモに参加する白基玩(5月1日、ソウル市) |
日本人が韓国社会を見る時、国民大衆が軍事独裁政権に対峙して打破り、死刑寸前の金大中氏を大統領に就かせるなど、国民大衆の持つ力への確信、軍と国家権力へのドライさ=根本的な不信が底流にあることを、うまく理解できていないことが多い。日本社会よりはるかに、国民大衆の国家権力への批判的な眼差しは強い。
李承晩、朴正煕、全斗煥など歴代軍事独裁政権時代と、民主化された韓国は、1945年をはさんだ日本社会のように質的に別物と考えるべきだろう。
「韓国」と一口で言っても一枚岩ではなく、国民大衆と軍・国家権力、あるいは進歩勢力と保守派には激しい拮抗と分断がある。
韓国の国民大衆にとって民主主義は、誰かに与えられたものではない。日本の植民地支配が終ってから、国内の軍事独裁政権と闘い、多大な犠牲を払って勝ち取られたものである。
メーデー集会での演説や、後に紹介するデモ時の警官隊との衝突の際には労働者は口々に「市民」、「民主」という言葉を発していたのが印象に残った。
今日でも反共法の影響の色濃い国家保安法違反容疑で進歩政党が内乱を陰謀したとされ弾圧されるなど、むきだしの「戦時国家」が顔を覗かせることもある。
民主化されてから年数が浅く、進歩勢力・支配層ともにまだ「若い」こともあり、相対的には日本より、支配の網の目の弱さを感じさせるのは確かである。
このような進歩勢力の力の源泉である民主化闘争のシンボルが「あなたのための行進曲」である。2015年5月1日、ソウル市乙支路の民主労総メーデーのデモで、「あなたのための行進曲」を作詞した白基玩(ペッキワン)を撮影した。
撮影している時は誰であるか分からなかったが、眼光の鋭いただ者ではない雰囲気を感じさせる老人で、大物ということはすぐに分かった。
帰国してから調べると白基玩であることが判明。韓国の民主化運動に名を残す、歴史的な人物を間近にすることができたのは幸運だった。(写真と文=中田宏)(2015年9月13日 高知民報) |