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ステージで元気に踊る文化実践団 |
民主労総の中央メーデーを取材して印象深かったのは、音楽の豊富さだった。韓国では労働歌のことを民衆歌謡と呼ぶ。
集会では日本のメーデーと同様、合唱団が「うたごえ」を披露するのだが、日本とはかなり様相が異なる。上下黒一色の衣装に身を固めた訓練された青年労働者でつくる文化実践団が登壇し、キビキビした動作でダイナミックに歌い踊るのだが、とにかく若い。5万人の聴衆は広場に座り込んでおり、音響設備の性能も良く、大型モニターも完備。まるで野外コンサート会場のようである。
聞いて曲名がすぐに分かったのは「インターナショナル」だけだった。異国の地で聞く「インターナショナル」には感慨深いものがあったが、他は韓国の民衆歌謡だったので、帰国してから調べた。いくつかの曲を紹介する。
このお金で生きてみろ 民主労総がこのところ最も力を入れている最低賃金闘争「最賃時給を1万ウォンに」をテーマにしたビートの効いた新しい曲で、文化実践団が舞台狭しと元気一杯踊っていた。現在の最低賃金時給は5580ウォンで、「この賃金で生活してみろ」という若者の憤りがほとばしる。(現在のレートで1万ウォンは1100円程度)。
パク・クネ政権による新自由主義的な施策導入により、非正規労働者の増大、賃金格差の拡大が大きな問題になっており、「生活できる賃金」という要求は、韓国社会にとって切実な課題になってきている。
鉄の労働者 1980年代後半から80年代にかけて韓国全土で激しくたたかわれた民主化闘争を学生運動ともに担った労働運動を象徴する民主労総のテーマソング的民衆歌謡。「ああ民主労組 われわれの愛 闘争で
勝ち取る愛 団結闘争 われわれの武器 お前と俺は 鉄の労働者」という歌詞が続く。「鉄の労働者」には統一振り付けがある。いつも集会でやるのだろう、労働者には広く知られているようだった。集会・デモでは繰り返し「鉄の労働者」が流れ、文化実践団を先頭に屈強な現業労働者風の隊列も揃いの振り付けでデモ行進していた。(写真と文=中田宏)(2015年8月30日 高知民報)
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