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現地に立つ開発許可標識(上)、伐採され土が露出した現場、ここに10メートルの盛土をするという(下) いずれも高知市池 |
高知市池の国立療養所東高知病院跡地、東京ドーム5個分になる22ヘクタールの広大な土地を、高知市内の民間会社が約450戸の「住宅」名目で開発を始めています。現場は高知医療センターの東奧、住吉池の北側で平成19年以降、開発計画が頓挫してきた曰く付きの土地。戦時中に浦戸海軍航空隊基地があった場所で、予定地に隣接して重要な戦争遺跡も数多く存在します。平和資料館・草の家などからは、戦争遺跡の破壊を懸念する声があがっています。
平成19年に開発計画の許可を得たのは、大阪市の株式会社ミキシング(佐藤美樹代表取締役)という業者でしたが、計画は頓挫、現在継承しているのは株式会社・和住工業(横矢忠志代表取締役、高知市中宝永町)。和住工業は今年7月、計画を譲り受け、工事を開始(工期は来年11月まで)。現場は草木が大量に伐採され、土がむきだしになっています。
横矢忠志・和住工業社長は取材に対し「あまり地盤がよくないので宅地として使えるか、試験盛土とボーリング調査をしている。1年ほどかけて調べる」と回答しました。
■旧都計法で許可
この用地は市街化調整区域で本来、大規模な開発はしてはならない場所ですが、この計画は平成18年に改正される前の旧都市計画法で許可を得ており、それ以来、工事が進捗しないまま10年後の今日まで業者が入れ替わり計画が継承され現在に至っているという特異な事情があります。
高知市都市建設部関係者によると「今の都計法ではコンパクトシティの流れの中で、このような大規模な宅地開発は認めていない。この許可は駆け込みだった」。
さらには東日本大震災以前の計画であるため、津波被害についても考慮されていません。高知県が公表している南海トラフ地震による津波被害予想では、この土地は5メートルから10メートルの津波に襲われることが予想されています。
横矢社長は「海抜10メートルまで全体を嵩上げする」と言っていますが、現在許可されている計画に大規模な盛土は含まれておらず、本当に大規模な盛土を実施するのであれば計画の大幅変更となり、開発審査会の承認を再度得る必要があるなど、実現の可能性には疑問がわきます。旧法による駆け込み許可=現在の法では認められず、さらに津波被害が想定される土地への大規模宅地開発を、工事が全く進んでいない中で計画を大幅に変更してまで工期を延長していくことは、近隣住民に説明がつかず、県民的な批判も予想されます。
高知市都市建設部関係者は「いつまでも工期を延ばせるわけではない。延ばすのなら工程表など具体的な計画を出してもらわなければならない」と話しました。(つづく)(2015年8月30日 高知民報)
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