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謝罪する東洋ゴム役員(3月17日、県庁) |
2017年7月開館をめざし建設中の県立図書館・高知市民図書館本館を統合・合築する新図書館の免震装置が、性能を偽装して大臣認定を捏造していた東洋ゴム工業製免震ゴムを使用することになっていた問題で7月7日、高知県教育委員会新図書館整備課は同社製品の使用を断念し、他社製品に変更する方針を明らかにした。同日の県議会総務委員会に報告したもの。
高知市追手筋に建設中の新図書館は現在基礎・1階部分の工事が進んでいるが、免震装置は地下ではなく、1・2階の間に入れる「中間免震」型であったことから、まだ施工されておらず、他社製品に取り替えても最小限の設計変更で済む。「不幸中の幸い」だった。
東洋ゴムの性能偽装・大臣認定捏造が発覚したのは3月中旬。同月17日には同社役員が県庁を訪れ、建設済の県庁本庁舎、安芸総合庁舎、高知東警察署、新南国警察署に捏造品が使われたことを謝罪した。
新図書館については使用される免震ゴムは捏造品とは別型番であるとして、県側の受け止めも工期の遅れを避けたいがためか、「ノープロブレム」(無問題)とする姿勢は隠しようようもなかった。「自分の家ならこんな企業の製品を使うのか」と憤慨したことを覚えている。
今回の変更は、県側の判断というより、6月になって東洋ゴム側から「納品できない、他社製品で代替してくれ」と申し出があり、他に選択肢がなくなったからだった。
3月24日に、日本共産党高知市議団は「新図書館に東洋ゴム製品を使うべきではない」との申し入れを同市教委にしている。最大の理由は「人命を預かる免震装置を偽造する企業体質は許されず、信用できない」に尽きる。今回の事件の本質はここにある。にもかかわらず東洋ゴムが自ら白旗を揚げるまで、「ノープロブレム」を繰り返した県の感覚は情けない。
ある県教委幹部は「もっと早く他社製品を使う判断はできなかったのか」との問いに、「6月までは東洋ゴムは問題ないと言っていたのだが、今回東洋ゴム側から他社に変えてくれとの話があった。東洋ゴムの都合による変更になるので、費用負担などの補償で有利になる」と話した。
もちろん相手に「引き金」を引かせる戦術は必要だが、「問題ない」を繰り返し、水面下でさえ他社に変更する選択肢を持っていなかったことは、県民の視線から見れば甘いと言わなければならない。
免震ゴムの他社製品への変更により、新図書館開館は1年から2年遅れるという(2018年から19年)。現県立図書館は新図書館開館の半年程前まで開館する予定で、新図書館の工期が伸びたとしても県民への影響は少ない。また高知市民図書館本館は27年12月末に閉館し、28年4月から追手筋にプレハブの仮図書館(蔵書2万冊程度)を開く。工期延長により仮図書館の設置が延長されるが、市民図書館の21の分館・分室は平常通り運営されることもあり、市民への影響も最小限で済むだろう。
県市合築という図書館のあり方、追手筋という立地場所自体にも強い批判を、半ば強引に押し切ってきた新図書館だった。東日本大震災による工事費の高騰や入札の不落、耐震基準変更による設計変更、そして免震ゴム、次々と障害が発生し、工期は大幅に延びた。
それでも新図書館は今後、県民・高知市民が末永く使う大事な財産、文化施設である。工期が延びたことを生かして、利用者への影響を最小限にとどめながら、よりよい図書館にするために有効に活用してほしい。(N)(2015年7月19日 高知民報) |