2015年7月5日

就労支援型に前のめり 江の口養護再編
病弱教育に取り組んできた県立高知江の口養護学校の今後のあり方について審議する「高知県における特別支援学校の再編に関する検討委員会(第二次)」(是永かな子会長)が6月22日に県教育センター別館で開かれ、発達障害を持つ高等部生徒を対象に卒業後の就労に特化した指導で全国的に注目されている徳島県立みなと高等学園の教員が招かれ報告しました。

報告したのは同学園の名山優・教頭。同学園では発達障害を持つ生徒を対象に入試で選抜を行い、就労に適応できるようにするための指導が最大の特徴。慢性疾患の生徒は受け入れておらず、小学・中学部はなく高等部のみ。ハードは県立の発達障害児施設や日赤の施設と複合化されていること、スクールバスはなく県下一円から長距離通学してくる生徒もいるなどの報告がありました。

報告を受けた委員からは、同学園のようなスタイルの学校への移行を前提にするような議論が目立つ一方で、小中高高等部を持つ病弱教育の特別支援学校の検討であるはずなのに、就労支援をメインにした形態が前面に出る検討のあり方に「幅が広くなりすぎではないか、心配だ」などという戸惑い、「現在、江の口養護学校に通っている保護者や現場教員の話を聞きたい。直接関わっている人の話を聞くことが大事だ」という声も出されました。

検討委事務局の特別支援教育課は取材に対し、「随時アンケートの内容などを伝えていくが、直接委員がヒアリングをする機会は設けるつもりはない」と回答。現場の意見を直接検討に反映させることへの消極性が目立ちました。

解説 この検討委員会は「秋には結論を出す」(田村壮児・県教育長)ことになっており、県教委の姿勢からは徳島県立みなと高等学園のような就労支援を前面に打ち出した学校へ再編しようという方向がにじみ出る運営になっています。

確かに発達障害の生徒の就労を支援するニーズは高いものがあり、これに応えることは重要ですが、同時に本来の病弱教育についての議論は全く不足しています。また事実上、入試で就労できる可能性の高い生徒を選抜するという手法にも特別支援教育のあり方として議論が分かれるところであり、慎重な検討が必要です。

何より検討委員会メンバーにに特別支援学校の保護者が1人も入っていなまま、保護者や現場教員の声を検討委員が直に聞く機会を設けない運営は、みなと高等学園教頭のヒアリングは早速実現したことと対比させても不可解と言う他ありません。

当事者の声に十分耳を傾けることもないまま、秋には結論を出すという県教委の姿勢は前のめりが過ぎます。保護者の声を大事に、じっくりした議論をしていかなければ禍根を残すことになりかねません。(N)(2015年7月5日 高知民報)