2015年6月7日

「コリア通信 セウォル号の遺族たち」C 「黄色いリボンに込められた思い」
 
剃髪して政府に抗議する母親(4月30日、ソウル市光化門)
セウォル号事故が発生したのは2014年4月16日午前8時58分頃。韓国仁川港から済州島に向かう大型旅客船セウォル号が、全羅南道珍島沖で突如転覆し、沈没した。

セウォル号には、修学旅行中だった安山市の壇園高校2年生325人、引率教員14人、一般客108人、乗員29人が乗っていた。

乗員・乗客の死者は295人、行方不明者9人。この中で壇園高校の犠牲者は、生徒250人、教員11人にもなる。

転覆時の波は約1メートルと穏やかで、積み荷の偏りや固定の不備、船体改修で重心が高くなり転覆しやすくなっていたなどの説があるが、船体は今も海中にあり、本格的な原因究明には未だされていない。遺族たちは、船体引き上げによる事故原因の徹底究明を強く求めている。

船体が完全に水没したのは10時過ぎで、避難には十分な時間があったにも関わらず、船内アナウンスは「動くな」というばかりで避難させることをせず、船長はいち早く一般乗客を装い脱出、さらに韓国海洋警察の初動の鈍さも重なり、多くの生徒が逃げ遅れて犠牲になった。これらの解明もこれからだが、パククネ政権からは、解明への消極性が透けて見え、これに反発する遺族たちは諦めきれず、我が子の死を受け入れられずにいるように見えた。

遺族支援活動のシンボルマークになっているのが黄色いリボンで、セウォル号遺族との連帯を示す。黄色には「無事戻ってくるように」という願いが込められており、韓国はもとより世界中に広がっている。(写真と文=中田宏)(2015年6月7日高知民報)