2015年5月24日

「コリア通信 セウォル号の遺族たち」A 「大統領令撤回求めて」
 
「意見書」と書かれたプラカードを持ち政府庁舎前で座り込む遺族(4月30日)
4月30日、光化門付近で黄色い一群が目に入った。セウォル号事故の遺族達だ。30人ほどが黄色いジャケットを着て、政府庁舎前でプラカードを手に座り込んでいる。

野球帽の下は女性も含め丸刈りが少なくない。遺族が抗議の集団剃髪をしたニュースを思い出し、現実に目の前いる人達が、あの事故の当事者なのかと思うと、中途半端な気持ちではカメラを向けることさえできず緊張した。

多くの韓国メディアが遺族を取り囲むが、遠巻きにするだけで話を聞くでもない。後で分かったのだが、警官隊との衝突シーンが主な目的で、遺族の心情や素顔にはあまり関心がなさそうだった。

韓国メディアを横目に、意を決して丸刈りの男性に話しかける。「チョヌン(私は)イルボン(日本)キジャ(記者)・・・」と言っていると、「おーい、こいつ日本人みたいだけど、誰か日本語分かるか」という感じで日本語を理解する女性キム・ソンソル(50歳)を紹介してくれた。

ソンシルとの話は後に紹介するが、遺族達には日本人にもっと事故のことを知ってほしいという思いがあり、日本語とハングルと英語とジェスチャーと筆談による懸命のコミュニケーションの結果、遺族たちでつくる「4・16家族協議会」は大統領令(※)撤回を求める意見書を提出するのがこの日の目的だが、政府側が取り合わないので、政府高官の車が戻ってくるのを庁舎前座り込んで待っているのだと教えてくれた。(写真と文=中田宏)

※事故調査特別委員会を具体化する施行令。委員に政府関係者が加わるなど客観性に欠けると遺族達が反発している。(2015年5月24日 高知民報)