2015年4月12日

「偽りの代償」 東洋ゴム免震偽装事件・下 「第二の姉歯 解明へ動き弱く」
 
県庁本庁舎に使用された東洋ゴム製の免震ゴム
今回の東洋ゴム工業による免震ゴム大臣認定捏造、性能偽装は10年前、全国を揺るがした「姉歯事件」=耐震構造計算偽装を想起させ、県関係者からも「第二の姉歯」という声が聞こえてくる。

「姉歯事件」は構造計算を担当した建築士や建設業者、マンション業者らを国会で証人喚問するなど、事実解明のために国会が積極的に動いた(解明自体は不十分なもの)ことは記憶に新しい。民間マンションではあったが、耐震構造計算という人命に関わる嘘をついた体質が糾弾された。

今回の事件の対象は南海トラフ地震への備えを進める高知県が、被災時の支援活動の本拠地とすべき県庁や警察の建物の免震装置という、人命にとり極めて重要な建物であり、このような装置の技術認定を捏造していたというのだからその悪質さは相当なものである。

そもそも、東洋ゴム工業に性能的に大臣認定をクリアする製品を生産する技術力はなかったのだろう。この業界はブリヂストンが圧倒的シェアを持ち、東洋ゴムは後発で数%のシェアしかないにもかかわらず高知県で多く使われていた。

部品調達を実際に決定するのは設計事務所である。県庁本庁舎のレトロフィット免震、これから東洋ゴム製品を使おうとしている県立・高知市民合築図書館はいずれも佐藤総合計画(東京)という大手設計事務所によるものだ。

今回の事件、「第二の姉歯」といいながら、真相解明に国会や司法が動く気配が見えてこない。妙に静かなのだ。ゴムの代替品の手配に汲汲としており、型番が異なれば同社の製品を使っても問題はないと行政に言わせるレベルにとどまっている。

東洋ゴム工業は、責任を担当者個人に矮小化してほとぼりが冷めるのを待っているが、大臣認定取得を捏造するなどという大それたことを担当者だけの判断でやったなどという話は考えにくい。「上」の指示があったと考えるのが普通だ。その解明こそが求められる。

今は建物の当面の安全性の確認を優先し、事実解明はこれからということかもしれないが、事実が底をついて解明され、責任の所在が明確になって取り除かれない限り、東洋ゴム工業という企業が再生することは有り得ない。偽りの代償は途方もなく重い。(おわり)(2015年4月12日 高知民報)