2015年4月12日

無法な低空飛行やめよ 仁比参議院議員
 
香美市の低空飛行について質問する仁比参院議員
3月30日の参議院予算委員会で仁比聡平参議院議員(共産)が、昨年12月15日に香美市物部町の西熊希民子さんが自宅庭で撮影した米軍機低空飛行訓練の動画について質問しました。質問要旨と閣僚の答弁要旨を紹介します。

仁比聡平議員 昨年12月15日、高知県香美市物部町の庭先で超低空飛行する米軍機の動画が撮影された。全国各地で繰り返される傍若無人な低空飛行訓練の確たる証拠だ。私も訪ねたが、静かな谷から飛び出した米軍機が、ほんの目の前を爆音とともに、谷を舐めるように旋回していき、その恐ろしさに泣き出す3歳の男の子が写っている。

上京した母親は日本の法律では私たちを守れないのかと政府に訴えた。県知事は年12月、「12月になって22回、ほぼ毎日のような訓練だ。子どもが泣くような過剰な訓練はやめてもらいたい」と記者会見している。中谷防衛大臣の地元だが、動画をみたのか。やめさせなければならないと思わないのか。

中谷元防衛大臣 まさに私の地元の問題だ。映像は見ている。感想としては、飛行によって住民が苦情を寄せ、子どもが恐怖で泣いているところもあるが、改めて住民の思いを実感した。

仁比議員 国交大臣は動画を見たのか。航空法上、自衛隊や民間機なら許されるのか。 

太田昭宏国土交通大臣 動画は見た。航空法は米軍機に対しては除外されている。

仁比議員 航空法では禁じられているのに、米軍には配慮を求めるだけというのがこれまでの日本政府だ。防衛大臣はいつ、どう米側に申し入れ、米側はどう答えたか。

中谷防衛大臣 私が就任したのは昨年12月24日だが、12月15日の飛行については米軍に中四国防衛局が申し入れたと聞いている。

仁比議員 何を申し入れ、米側はどう答えたのかを聞いている。 

中谷防衛大臣 昨年12月15日の香美市上空の航空機の飛行に関し、高知県を通じて中四国防衛局に苦情が寄せられたことを受け、米軍に問い合わせた結果、12月23日に米軍機であるとの回答を得た。中四国防衛局から第5空軍司令部に対して米軍機の飛行に関しては地元住民に与える影響を最小限に止めるよう申し入れている。

仁比議員 それだけかと。どこの所属機が、何のためにどう飛んだのかを明らかにさせるのが当然だ。そんな態度で主権国家といえるのか。高知県議会は3月、県民の命を危険にさらす訓練中止を強く求める意見書を全会一致で採択した。総理は動画を見たのか。こんな訓練はやめさせるのが政府の責任ではないか。

安倍晋三総理大臣 写真は見たが、動画はまだ見ていない。米軍が訓練を通じてパイロットの技能の維持向上をはかることは、即応体制を維持する上で不可欠な要素。日米安保条約の目的達成のため極めて重要だ。他方、米軍が全く自由に飛行訓練を行ってよいわけではない。我が国の公共の安全に妥当な考慮を払って活動すべきことは言うまでもない。

指摘の米軍機の飛行について高知県からの連絡を受け、防衛省において米軍に対し地域住民に与える影響を最小限にするよう改めて要請したと承知している。政府としては今後とも米軍機の飛行に際しては安全面に最大限配慮するとともに、地域住民に与える影響を最小限に止めるよう米軍と連携を密に万全を期す。

仁比議員 この飛行は直線距離で240メートル程度、亜音速マッハ0・8で飛んだ。この飛行が妥当な考慮を払ったと考えているのか。

中谷防衛大臣 米側の回答は飛行の有無のみで、飛行の詳細が含まれていたわけではない。防衛省としては平成11年の日米合同員会合意を尊重し、地元住民への影響を最小限に止めるよう引き続き米側に働きかける。

仁比議員 ずっと妥当な考慮を求めても実効性はないではないか。総理はこの飛行を妥当だと考えるのか。はっきり答えなさい。

中谷防衛大臣 米軍の飛行訓練は全国各地で行われているが、平成11年の日米合同委合意を尊重して飛行訓練が実施されると認識している。所属部隊、機種については、米軍の運用にかかる事項であるためすべてを承知できる立場にない。昨年12月15日の香美市上空の飛行に関する米側の回答には所属部隊、具体的な機種が含まれておらず承知していないが、日米合同委合意を尊重して訓練が実施されていると認識している。

仁比議員 今の答弁は妥当だという判断か。

中谷防衛大臣 平成11年の日米合意を尊重して訓練が行われていると認識している。

仁比議員 子どもが泣き叫んでいる。これが妥当というなら、全国どこでもこんなことをやらせるのか。

中谷防衛大臣 在日米軍による低空飛行訓練に関する平成11年の日米合意において在日米軍は国際民間航空機関や日本の航空法により規定される最低高度基準を用いて低空飛行訓練を実施する際、同一の飛行高度規制を現在適用している。

仁比議員 いくら日米合意を持ち出しても、どんどんひどくなり、増長している。事態は激化し、傍若無人ぶりは増長している。低空飛行訓練中に動画を自撮したパイロットが、その動画を編集しBGMを付けて「ザッツ・ア・シャック=あれが掘立小屋だ」というタイトルでネットで公開している。これが妥当な考慮か。

中谷防衛大臣 米軍に事実関係を照会中。米軍の飛行訓練に際してパイロットが画像を撮影しているか否かといった事実関係を承知していない現段階でコメントは差し控えるが、いずれにせよ、防衛省としては米軍の運用にかかる事項ではあるが、米軍機の飛行に際しては安全に配慮するとともに、地元住民に与える影響を最小限に止めるよう米側に働きかけてきたところであり、米側の理解が得られているものと承知している。

仁比議員 事実関係を紹介する以上、結果を当委員会に報告するのか。

中谷防衛大臣 現時点においては事実関係を承知していない。今後米軍等に引き続き事実を照会していく。

山本達夫・防衛省地方協力局次長 米側から回答が得られた後、適切に対応する。

仁比議員 強く提出を求める。腕自慢や一瞬の油断で操作ミス、重大事故に至る。94年に米軍機が墜落した早明浦ダムはつい先だ。日米地位協定と米軍特例法を見直して規制すべきだ。

問題は政府当局はこうした低空飛行訓練を十分把握しうるということだ。国土交通大臣に確認するが、米軍機も飛行計画=フライトプランを日本政府に通報する義務があるのか。

太田昭宏国土交通大臣 米軍機については航空法97条および日米地位協定実施に関する特例法に基づき、飛行する場合には国土交通大臣に飛行計画の通報が必要。

仁比議員 米軍機の通報はどう扱われるのか。

田村明比古国土交通省航空局長 飛行計画の通報事務は空港事務所・空港出張所で行われるが、米軍機は自衛隊の飛行計画を扱うシステムを経由して国土交通大臣のシステムに通報される。通報後、当該飛行計画に記載されている出発空港及び到着空港に配信される。

仁比議員 米軍厚木基地から米軍岩国基地への低空飛行訓練の場合、通報と飛行計画はどう扱われるのか。

深山延暁防衛省運用局企画局長 米軍機が所属する部隊から海上自衛隊厚木航空基地に通報される。通報された先については最終的には国土交通省の情報管理システムに配信する。

仁比議員 こういった仕組みは日米間でいつ合意されたのか。

岸田文雄外務大臣 昭和35年に日米地位協定が締結された際に米側と合意が成立している。

仁比議員 どの米軍機がどういうルートを飛ぶのかを日本政府は1960年の地位協定以来ずっと把握しているにもかかわらず、これまで米軍の運用とか政府としては承知していないとか国民を欺き続けてきた。国民の安全平和を守るべき政府の不作為だ。中谷防衛大臣は2013年9月13日の高知新聞のインタビューで「当然何時頃に通過する予定ですということは、地元に言っておくべきだと思います」、防衛省や国交省が地元に伝えるべきだと思うかとの記者の問に「自衛隊はそうしてますからね」と答えている。大臣になったのだから地元に伝えるのか。

中谷防衛大臣 米軍の飛行経路は、米軍が飛行訓練の目的達成、安全確保、住民への影響抑制等の必要性を安定的に満たす観点から、一定の飛行経路を念頭に置いて飛行することがあることを承知しているが、具体的経路の詳細は米軍の運用にかかる事項であり承知していない。

仁比議員 政治家として新聞のインタビューに答えておいて何という情けない答弁だ。米軍機が飛び回っている高知県の嶺北地域と香美市物部町で防災ヘリやドクターヘリの出動は10カ月に42回にのぼる。2011月11月には防災ヘリ訓練の同時間帯に3機の米軍機が低空飛行した。ヘリのパイロットは命の危険を感じたと言っている。フライトプランの情報を関係自治体に提供せよという声も上がっている。やらないのか。

中谷防衛大臣 フライトプランは米軍の運用に関わる情報であり、開示は控える。

仁比議員 妥当な考慮など有り得ない。即刻やめさせるべきだ。(2015年4月12、19日 高知民報)