2015年4月5日

「偽りの代償」 東洋ゴム免震偽装事件・中 「禍根残す新図書館への使用」
 
建設中の県・高知市合築図書館
2017年開館をめざして建設中の、高知県立図書館・高知市民図書館本館を統合合築する新図書館の免震装置72基に、東洋ゴム工業製の免震ゴムが使用されることになっている。

図書館の1階と2階の間に免震装置を入れる「中間免震」タイプで、認定番号はMVBR−0437。今回捏造データで大臣認定を得たことが発覚して取り消された番号とは非常に接近しているが別である。

県教育委員会新図書館整備課によると「JVが東洋ゴムに製品の発注をしているが、実際の工事は1年ほど先になると聞いている」。

3月19日の県議会総務委員会では自民、共産、公明会派の委員から、「今回の問題をどう教訓にするのか。抜本的な再検討が必要」(公明委員)、「(東洋ゴムを)使いよったらおおごとよ。それは常識的に分かっているはず」(自民委員)などと東洋ゴムの企業体質を問題視する厳しい指摘が相次いだ。

新図書館建設については新図書館整備課が一義的に対応するが、技術的な問題は土木部建築課を窓口にしており、田中成一・建築課長は総務委で「どうするか検討しているが、工期等のこともあり、まだ結論は出ていない」と答弁している。

鈍い高知市の反応

新図書館建設には県とともに高知市にも重要な関わりがあるのだが、今回の問題で東洋ゴム工業は高知市側に何ら釈明をしておらず、高知市や同市教委は情報をほとんど持っていない。

3月24日に閉会した高知市議会では、日本共産党以外の会派は県議会とうってかわってこの問題への関心は低く、「市議会として新図書館に東洋ゴム製品を使う事のないよう意思表示をすべきだ」という共産党の申し出に応じる会派は皆無だった。共産市議団は議会閉会日に松原和廣教育長に同様の申し入れをおこなっている(別記事参照)。

新図書館の工事は東日本大震災後の資材不足と価格高騰、耐震構造の不備などで工期が遅れこんでいるため、県・高知市には「これ以上、工期を伸ばすことは避けたい」という思いが強く働いていることは想像に難くない。図書館建設に関わる市職員からは「一部に不正があったからといってその企業の製品全てがダメというのは感情論だ」との声も聞かれた。

しかし、今回の事件は人命を守るための製品の性能をデータを捏造して認定を取得していたという悪質極まりない内容であり、個人レベルの「一部の不正」に止まるものではなく、組織的な関わりを含め、実態の全容もまったく明らかになっていない。

談合に加わった企業に一定期間の契約からの排除など相当のペナルティが科せられるのと同様、悪質な捏造事件を起こした企業の製品を使うことなど、あってはならないのは当然である。

また、免震装置はこれから60年間も使用し、地震発生後にはゴムの交換など重要なメンテナンスが必要になるのだが、その時に、これほどの大事件を起こした東洋ゴム工業という企業が存続しているのかも甚だ疑問である。

このような問題だらけの企業の製品を、県民・高知市民共有の貴重な財産である新図書館に、この期に及んで使おうとする感覚は県民・市民には理解されない。市民目線で、よくよく考えて判断しないと、重大な禍根を残すことになりかねない。(つづく)

東洋ゴム新図書館に使うな 共産高知市議団が要請 

東洋ゴム工業が同社の免震ゴムの大臣認定基準をデータを捏造して不当に取得して出荷していた問題で、日本共産党高知市議団(下本文雄団長)は、建設中の県立・高知市民合築新図書館に同社製の免震ゴムを使うことが計画されていることから3月24日、命を預かる構造物でに関わる問題で重大なコンプライアンス違反をした企業の製品を新図書館に使用しないよう松原和廣・高知市教育長に要請しました。

共産議員団側は「免震装置は人命を預かる大事な構造物。これを偽造する企業体質は許されない。行政としてきちんと姿勢を示すべきだ」、「このまま行くのではなく、情報をしっかり集めて判断を」などと指摘。

松原教育長は「今回問題になっている製品とは別のものと聞いているが、市民の不信感を持つという問題もある。内部で論議していかなければならない」と回答しました。(2015年4月5日 高知民報)