2015年3月1日

浦戸城跡に龍馬記念館新館 「長宗我部の聖地これ以上壊すな」反対署名も
 
龍馬記念館新館の建設予定地
空前の「長宗我部ブーム」の下、高知県が長宗我部元親が完成させた高知市浦戸の浦戸城跡に龍馬記念館新館建設を計画していることに、「長宗我部の聖地をこれ以上、壊さないで」、「もっと浦戸城の保存活用の議論を」という声が地域住民、専門家、全国の長宗我部ファンからあがっています。

同館の建設を担当する県文化推進課によると、現在バスロータリーがある付近に博物館的機能を強化した新館が建設される予定で、のべ床面積は1900平方メートル。平成28年7月着工、29年度オープンを目指しています。

建設予定地は浦戸城の核心部「詰の段」にあたり、この一帯は埋蔵文化財包蔵地に指定されていることから、開発のためには文化財保護法94条(開発者が国や地方公共団体の場合)に基づく手続きが必要に。発掘調査・工事立会・慎重工事のいずれかを県教育委員会文化財課が判断して、開発者に指示することになりますが、26年10月6日の県議会危機管理文化厚生委員会で担当課長が「埋蔵文化財は残存しておらず、発掘調査は必要ないと文化財課から聞いている」と答弁しており、文化財課への取材でも「設計図面が出てきてから正式に判断する」とは言いながら、工事立会で進めることが既定路線になっていました。

発掘調査を必要としない理由について「現地は昭和30年代にヘルスセンターが建ち、遺跡は破壊されている。改めての調査は不要」との声がありますが、「だから発掘調査が必要ないというのはあまりに乱暴」(埋蔵文化財専門家)との指摘もあります。

昭和30年代の地形図からは、新館の建設予定地は、ヘルスセンターの建物があった場所とは異なることが読み取れるため、これを文化財課に指摘したところ、「ヘルスセンターの建物があったのはもっと南。今回の予定地とは異なるが、過去の調査を総合すると地山が見えていたとの記録もあり、遺物が含まれている層は削りとられている可能性が高い。工事立会で、何かあれば記録することで文化推進課と話をすすめている」(宮里修・文化財課主幹)。

2月23日に開会した2月県議会には龍馬記念館新館の設計関係予算が計上されていますが、一方で住民らで作る浦戸城保存会(川島義保会長)は、「これ以上城跡を破壊することなく、城山を城山としてきちんと調査し、国指定史跡をめざすべき」という趣旨の署名活動を活発に展開。県議会での議論や、県民的議論も不十分なままです。貴重な歴史的財産である浦戸城跡の保存活用に向けた県民的な議論を経ぬままの開発は禍根を残すのではないでしょうか。

※浦戸城跡 長宗我部元親が完成させた太平洋沿岸唯一の海城で、小田原攻め、朝鮮出兵の出撃基地になり、山内入国の際には浦戸一揆の舞台にもなった戦国時代の歴史が詰まった重要な遺跡。かつての浦戸は土佐の入口、交通の要衝で北面に城下町が広がっていた。今も遊歩道を西方向に歩くと、敵の侵入を防ぐための堀切や二の段、三の段など当時の城の痕跡をみることができる。(2015年3月1日 高知民報)