2014年9月21日

グラマンエンジン 香南市教委 アクトランドへ寄託を検討
 
 
 
写真上=グラマンのエンジン、中=開館準備中のアクトランド、下=F6F機が墜落した海岸(香南市吉川町)
香南市が所有する戦争遺物=太平洋戦争中に撃墜されて土佐湾・物部川河口に墜落した米海軍グラマンF6Fヘルキャット艦上戦闘機(※)のエンジンとプロペラの保管と公開を、民間商業施設に委託する案が急浮上。波紋がひろがり、賛否が交錯していますが、背景には市町村に任せきりの戦争遺跡保存のあり方の問題点が見えてきます。

1981年、当時の吉川村の漁民から網に異物がかかるとの苦情があるため、村が海中を調査し、沈んでいたエンジンとプロペラを引き揚げたもので、プロペラは1枚1・8メートル(3枚ある)になる大きさ。現在は香南市の「物品」として吉川町の農産品販売所に設けられたスペースに保管されています。

ただし、今は販売店は閉店して無人のためシャッターが常時閉まり、県民が見学することはできず、事前に市教委に団体での申し込みが必要に。「個人的に見せてほしいと言われてもなかなか対応できない」(市教委生涯学習課)。貴重な資料でありながら、活用されているとは言い難いのが実情です。

寄託

このエンジンとプロペラは海中に36年、陸上に引き揚げてから33年が経過しているため腐食が進行。同市教委は「エンジンのフィンが朽ちてきているが、専門知識がなく困っている」。

そこで急浮上してきたのが香南市野市町に開館を予定している「アクトランド」への寄託(保管を委託する)案。アクトランドは有料の商業展示施設で、館長は株式会社技研製作所社長の北村精男氏(香南市出身)。アートとテクノロジーをテーマに開館準備をすすめているといいます(開館時期は未定)。

同市教委生涯学習課・近森孝章課長は「寄託するかどうかはまだ決めていないが、寄託することで保存・活用にメリットがあると考えられるので前向きに検討したい」とコメント。

アクトランドの岡崎洋一郎顧問は「うちとしては、どうしてもということではないが、香南市さえよければ、地元資料を残すのに協力したい。商売に使うつもりはない。保管場所を作るのに費用をかけなければならないが、せっかくの資料も見てもらってなんぼ。このまま腐らせていいのか。置くのであれば誰でも無料で見ることができる場所にする」と話します。

反対意見も

一方で、平和団体などには「墜落現場に近い場所で、海軍航空隊などの戦争遺跡と一体に保存されるべきだ」(馴田正満・平和資料館草の家研究員)など反発する声も。また地元吉川町にも、エンジンとプロペラを地域活性化のために活用したいという声もあり、アクトランドへの寄託が地元住民の総意ではない様子もうかがえます。

出原恵三・県立埋蔵文化財センター調査第一班長の話 墜落現場の近くで公的に保管公開するのが筋だが、現在の保管場所は海が近く腐食が進みやすい。津波も心配だ。公的保存が実現されるまでは、民間施設に置くのもやむを得ないかもしれない。ただし、海から引き揚げ平和教材として活用してきた旧吉川村の強い思いを引き継いでいく形でなければならない。

※馴田氏らの調査により、墜落機は1945年3月19日に対空砲火で撃墜され、旧日章村の海岸から90メートルほどの海中に突っ込んだもので、空母ベニントンから飛来したF6F、操縦士はアール・マカリスター海軍中尉であることが判明。遺体は墜落現場近くの海岸に地元漁師の手により埋葬された(同年12月に米軍が遺体を回収し横浜に埋葬している)。(2014年9月21日 高知民報)