コラムアンテナ「オスプレイが飛ばない理由」
 
オスプレイを使った「防災訓練」に反対する集会(2月6日)
2月7日に計画されていた南海トラフ地震を想定した日米共同統合防災訓練に参加を予定していた米海兵隊オスプレイ・MV22が、急きょ視界不良や機体への着氷を理由にして訓練に参加しなかったことに県民から驚きの声が上がった。「これくらいの天気で飛べなくて防災の役に立つのか」と。

この日の高知駐屯地は冷たい小雨だったが、風もなく視界も効き、悪いコンディションではなかった。事実、大型ヘリCH47などの自衛隊機は特段の支障もなく離発着していた。

米軍側から示された参加中止の理由は、普天間・岩国基地間の天候であるとしており、県危機管理部幹部は「高知は大したことがなくても、むこうは天気が良くなかったのだろう。残念だが単なるイベントではないのだから、安全に配慮するのは当然だ」と表向きは理解を示すが、沖縄を離発着する民間旅客機さえ欠航が出ない天候での参加中止は「機体の能力に期待する」と繰り返し、オスプレイが参加しての訓練を合理化してきた県当局にとって心中おだやかでない様子が見て取れる。

表向きの理由とは別に、本当の不参加の理由はどこにあるのだろうか。「ミッションの優先順位が低い」、要は「米軍に防災訓練などやる気がなかった」という識者の指摘が報じられているが、そのことは取材を通じても感じた。

高知県は今回の訓練はあくまでも防災訓練であり、軍事訓練であれば認めないと公言。防災訓練であるからには事前説明や議論の過程を透明化して、米軍代理人である防衛省との折衝をすべて報道陣にフルオープンにしてきた。

すでにこのスタイルが全国的には異例で、いわゆる「頭撮り」で冒頭だけ撮影させ、議論の内容はシャットアウト、終了後に主な内容を防衛省側が説明するというパターンが通例である。7日の訓練本番時も高知駐屯地内に開設された指揮所で防衛副大臣、県知事らが状況報告を受ける場面でさえ、「頭撮り」で報道は退席させられたほどだ。

オスプレイに関するセンシティブな折衝まで報道陣の前でやりとりさせられ、あれこれと注文を付けてくる高知県は、防衛省はもとより米軍側からもやっかいな存在と認識されているだろう。非核平和港湾決議にもとづき県内港に入る米軍艦に非核証明を求めてきたという実績もあいまり、ありうる話である。

さらに今回の訓練では、進入高度を事前に指定し、モード変換などで事前の約束を破る「危険」な行為をしないようにと県職員がオスプレイに乗り込み米軍を監視することになっていた。

これはオスプレイの「安全性」に高知県が「お墨付き」を与えてしまう側面もあるが、米軍にとっては重大問題だ。日本政府との関係では米軍は地位協定など監視されるような関係にはない。日本政府は「お願い」するだけで、米軍はそれを聞き置くだけ。

それをこともあろうに一地方自治体である高知県がオスプレイに乗り込んできて米軍を監視するというのであるから米軍には一大事である。

「防災訓練」であれば自治体に米軍が監視される前例を作ってしまえば他県に広がる恐れもあり、基地を強要されている沖縄の自治体とのあまりにも落差のある対応は米軍としても避けたいはず。高知県内での飛行実績が欲しいという要請とのバランスの結果、天候を一種の口実にした訓練参加の取り止めにみえる。

高知県に、このような対応をとらせたのは県民のオスプレイの安全性への強い懸念、米軍機低空飛行訓練への反発、さらには粘り強い平和運動の力であることは間違いない。だとすれば今回のオスプレイ不参加の直の的要因は天候ではあるが、実質は県民世論の勝利とみることができるはずである。(N)(2014年2月16日 高知民報)