コラムアンテナ「バカロレア構想の危うさ」

 
生徒減少を受けて今後の県立高校統廃合についての案を提示する「県立高等学校再編振興計画」具体化として、高知南中・高校を閉校し、高知西高に中学校を併設する「前期実施計画」案が波紋を広げている。高知南中・高廃止の動きは地元紙が大きく報じており、ここでは主に高知西高への中学校併設と中高一貫=国際バカロレア認定校について考える。

国際バカロレア(IB)とは何か。文部科学省のサイトには以下のような紹介がある。

「国際バカロレア機構はスイスのジュネーブに本部を置き、認定校に対する共通カリキュラム作成、年齢に応じたプログラムがあり、DP(ディプロマ資格プログラム= 16歳〜19歳)の課程を修了し、ディプロマ資格取得統一試験に合格することで、国際バカロレア資格を取得できる。国際バカロレア資格は国際的に認められている大学入学資格のひとつ」

外国の大学入学資格を取得する課程を提供(資格取得には、さらに修了生が統一試験に合格しなければならない)するのが国際バカロレア認定校で、現在は立命館宇治など数校の私学で実施されているが、文科省はこれを5年で全国200校に広げようとしている。

「認定校」でDP資格を得るにはバカロレア機構が指定するカリキュラムによる高2、高3年の授業が義務付けられ、母国語以外はすべて英語による授業が課せられる(将来的には全体の半分程度に緩和されると県教委はしている)など、日本の高校教育とは異質な特殊な課程となる。

県教委の構想では西高英語科を廃止し、平成33年度に国際グローバル学科を設置。34年度にバカロレア認定を受け、34年、35年度に20人にDPプログラムを実施する。これに先立ち30年度に西中学校を開設し、中高一貫で高2、高3年のDPをこなせる英語力をつけることにしている。

県立中高一貫校は県教委の肝いりで14年から高知南、安芸、中村で始められたが、地元市立中学への負の影響もあわせ、意義が見えにくく、開校から12年が経つが、県教委の総括が見えない。とりわけ南中高は一時は高校での大量中退が大きな問題になるなど、現場が苦労してきた経過がある。

今回、生徒減と津波対策という理由であっさり南中高を廃止し、西中高に衣替えをということだが、まずは県立中高一貫教育が、生徒と地域、県民に何をもたらしたのかについて底をついた総括が先ではないか。

バカロレア構想に安易に飛びつくことは相当に危うい。これまでの西高の伝統ある教育と地元高知市立中への影響は重大であり、あまりに唐突で議論が足りない。

バカロレアを担当する県教委職員は「高知県がめざすキャリア教育の目標と完全に一致する」と胸を張るが、外国大学の受験資格を得るという特殊なコースを、公教育が小学校6年生に選択させようという発想はいかにも歪である。

外国の大学もいいが、地元の国立大学や県立大学にしっかり合格させたいというのが多くの県民の願いではないのか。県教委のバカロレアへの前のめりがどうにも気にかかる。(N)(2014年2月9日 高知民報)

※写真上は県教委が新西中の校舎建設を想定している西高に隣接した用地、下は県教委事務局が教育委員に示してるスケジュール案。