近くて遠い隣国 韓国からのレポート N文化施設になった旧ソウル駅

 
東京駅によく似ている旧ソウル駅庁舎前には抗日活動家・姜宇奎の像
韓国の陸の玄関口「韓国鉄道公社ソウル駅」利用者は1日20万人にのぼり、高速鉄道KTX、ソウルと釜山を結ぶ京釜線、空港鉄道など重要路線の始発駅で、大勢の人々で賑わっていた。

ガラス張りのモダンな新駅舎(2003年完成)の隣に、ルネサンス風の重厚な旧駅舎が保存されている。旧ソウル駅は日本植民地時代の1925年に東京帝大教授の塚本靖の設計により南満州鉄道株式会社が建設。塚本は東京駅を設計した辰野金吾の弟子であり、両駅の雰囲気はよく似ている。朝鮮総督府とともに「日帝36年」のシンボル的建築物である。

だが、韓国独立後も同駅舎は活用されてきた。貴重な建築物であるとして史跡に指定され、駅としての役割を終えた後には戦前の様式に修復保存され、文化施設になっている。

実は訪れたソウル駅周辺には、大量のホームレスや失業者がたむろしていた。韓国にはスマートフォンなど世界最先端の技術や華やかな繁栄とともに、取り残された影の部分が少なくないことが実感された。(写真と文・中田宏) (2013年12月1日 高知民報)