近くて遠い隣国 韓国からのレポートM「新世界百貨店本店」

 
新世界百貨店本店、後方に南山のソウルタワー
明洞の繁華街に近い地下鉄4号線・会賢駅からすぐに、1930年に朝鮮初の百貨店・三越京城店として創業された建物を引き継ぐ「新世界百貨店本店」がある。

戦後は東和百貨店として韓国人が経営し、63年から新世界の経営となった。韓国のセレブ御用達、ルイ・ヴィトンやシャネルなどブランド品が並ぶ高級デパートで、戦前の建物の本店だけではなく、近代的な14階建の新館が隣接して、渡り廊下で連結されている。

角地の形状をうまく利用した6階建の本店の建物は、柔らかな曲線の意匠が凝らされ、銀座や日本橋の老舗百貨店に通じる風格がにじみ出ている。

正面玄関に掲げられた金属プレートには創業1930年と刻まれていた。朝鮮の近代化が日本の植民地支配によって持ち込まれた歴史の事実を、韓国の人達は思いの外、冷静に受け止めている。

新世界百貨店に限らず、ソウルには日本植民地時代の建物を保存して今も使っている例は少なくない。反日一辺倒だけではない、複眼的な日本への視線を感じとることができる。(写真と文・中田宏)  (2013年11月24日 高知民報)