「ヘリモードは安定」? 日米合意の不理解露呈

 
10月9日の県議会危機管理文化厚生委
高知県は、オスプレイが参加する日米共同統合防災訓練が10月25日に香南市や土佐清水市で実施されるにあたり「日本国における新たな航空機(MV−22)に関する合同委員会への覚書」(以下「合意」)遵守を大前提にしていますが、「合意」の核心部であるヘリモードで基地上空以外は飛ばないという点について、普天間基地以外であればヘリモードで基地以外の上空を飛んでも構わないとされていると県が理解していることが明らかになりました。

遵守と言うが・・・

この「合意」は、例外規定だらけで、普天間基地の運用でもまったく守られていないのが実情ですが、尾ア正直高知県知事は「国と国とで決めたことは守ってもらわなければならない」と、「合意」遵守をオスプレイが訓練に参加する条件として提示し、防衛省側もそれを了承してきた経過があります。

しかし、「合意」を守ると言いながら、出発点の「合意」そのものの解釈に不正確さがみられます。

「合意」では事故が多発している垂直離発着モード(ヘリモード)で飛ぶのは「運用上必要な場合をのぞき通常、米軍の基地内上空に限る。(プロペラが斜めになる)転換モードで飛行する時間は「できる限り限定する」(仮訳6−e)とされています。

「合意」は、ヘリモードは基地上空限定、転換モードは市街地上空も飛ぶことがあるが短時間で済ませるとなっているのです。

つまりヘリモードのほうが、転換モードよりもさらに危険度が高いという認識にたっていることになります。

オスプレイの事故は、ヘリモードと転換モード時に起きており、とりわけヘリモード時には通常のヘリよりも構造上不安定で(プロペラが小さく、かつ離れている)追い風に弱く、エンジントラブル時にはオートローテーション機能が働かないこと、高温で猛烈なダウンウォッシュ(下方への吹きつけ)、騒音などの問題があるため、とりわけヘリモードに制限を加えていると思われます。

ヘリモードは安定?

ところが、高知県危機管理部は、「普天間限定の話であり、他には当てはまらない」、さらには「転換モードは不安定だが、ヘリモードできっちり飛んでいる時は安定性が高い」(10月9日、県議会危機管理文化厚生委員会で、塚地佐智議員の質問への高松清之・危機管理部長の答弁)などという認識で、洋上でモード転換を終了して、ヘリモードになっていれば、人家上も含め進入を是とし、「合意」は遵守されていることになるとしています。

防衛省からの県への説明がそのようになっていることを繰り返しているためと思われますが、「合意」にある基地上空以外のヘリモード飛行禁止が、「普天間限定」という認識は不正確です。

「合意」遵守と言うなら、香南市の50科普通科連隊駐屯地や土佐清水市の航空自衛隊分屯地では、ヘリモードで人家上空を飛ばざるを得ず、オスプレイの訓練はできないという結論になります。少なくとも他機種での実施を求めるのが筋でしょう。 

にもかかわらず、高知県が自らヘリモードによる人家上空の飛行を良しとしたことは、「合意」の趣旨と筋が通らず、「防災」と名がつば日本全国どこの市街地上空でもヘリモードで飛ぶ突破口とされてしまう危険があります。(2013年10月20日 高知民報)