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赤煉瓦と芝生が美しく、凄惨な過去があった場所には思えない |
日本による植民地時代には反日活動家を投獄し、戦後1987年まで韓国政府が使用していた西大門刑務所(ソウル市)を記念保存している歴史館を訪ねた。
98年に開館した同館には、1908年から建てられた監獄や死刑場が遺され、日本の官憲による投獄者の取り調べや拷問が再現されていた。
赤煉瓦と庭の芝生は美しく、一見すると紡績工場のようだが、展示室には、錆びた鉄製の足枷、逆さ吊りにされた人形、生爪をはぐ拷問の時に腕を台に固定した用具、獄死したおびただしい犠牲者の写真など、日本人として、正視できないような資料が数多く並んでいた。(日本語解説もある)
来館者には若者が目立ち、小学生から高校生くらいの児童生徒同士のグループ、親子連れも多かった。おそらく見学が学校から夏休みの課題にされているのだろう。大半の見学する子どもらは獄舎の前でピースサインをしたりと、無邪気なものだった。
展示スタイル、戦後独立した後は長く軍事独裁政権が利用されてきた歴史を欠落させているなど、ややバランスを欠いた面もありながら、韓国が国をあげて植民地時代と自国の近代史を若い世代に語り継いでいこうとしていることはよく分かった。
この敷地の奥にひっそりとある絞首刑場は、韓国国民にとってセンシティブな場所であることから撮影禁止にされているのだが、それとは知らずカメラを取り出した時に、飛び出してきた歴史館職員と思われる50代と思われる男性に厳しい口調でとがめられた。この国にある日本人への厳しい感情の一端が読みととれた。(写真と文・中田宏)(2013年10月13日 高知民報) |