2013年7月21日

コラムアンテナ 「安定が作る不安定」

 
街頭に貼り出された公明党のポスター
7月21日に投票される参議院選挙にむけて街角には各政党が多くのポスターをはり巡らせているが、ひときわ異彩を放っているのがピンク色の「安定は、希望です。公明党」というイメージポスターだ。

公明党サイドによると、ピンク色は安心感を表し、白抜きの文字の視認性も高いそうだ。確かに街頭でこのポスターはよく目立つし、デザイン的にも考えられていると思うが、このポスターを見るにつけて、わき上がってくる違和感を抑えることができない。

「安定は、希望です。」の「安定」とは何だろうか。ポスターのコピ?はこう続く。

「安定はただの守りではない。政治の安定こそが、経済はもちろん、この国の生活のすべてを強くする道。安定は力であり、未来への希望である。そう信じる公明党です」

要は昨年の衆院選に続いて、参議院でも自民党・公明党が絶対多数を占めること=「捻れ国会解消」が、政治の安定、ひいては経済、生活の安定、希望につながるということらしい。

このポスターを最初に見た時、「安定は、希望」という意味がよく理解できなかったが、なにより政治の「安定」が国民生活に何をもたらしたのかという事実が決定的に欠落している。

公明党が初めて政権に入ったのは1993年の細川非自民連立内閣だった。野党に転落した自民党は公明党・創価学会の政教分離問題、池田大作・創価学会名誉会長へのバッシングを強め、社会党との連立で政権に復帰(自社さ政権)。野党になった公明党は解党して新進党に潜り込むなど複雑な経緯を経た後、99年10月に非自民から自民党との連立へ電撃的に方針転換して小渕・自自公連立政権に参加。それ以降は森、小泉、第一次安倍、福田、麻生、そして第二次安倍内閣と、10年以上にわたり自民党と連立して政権の座にある。

公明党が政権にいた10年間の大半は、国会は共産党を除く翼賛化で「安定」していたはずだが、その中で国民生活はズタズタにされ、安定とはほど遠い状況に陥ることになる。

その象徴的な事例が派遣労働の無原則な拡大であり、非正規雇用、使い捨てが当たり前の社会に日本がなってしまったことだろう。

99年6月、公明党が政権に入る直前、小渕内閣が労働者派遣法を大改悪する。それまでの派遣労働原則禁止、特別に認められた業種のみを認めるポジティブリストから、原則解禁で建設、医療、製造など6業種のみを禁ずるネガティブリストへと変えた。これが、非正規労働の蔓延、労働者の使い捨てが当たり前にされる「不安定社会」への分岐点になった。

この改悪法案に公明党は、民主党、社民党とともに賛成。その直後に政権に入り、03年には小泉自公政権が、それまで派遣労働を禁じてきた製造業を解禁する法改悪をしたことが、「派遣切り」、「ワーキングプア」など社会的に大きな問題へとつながっていく。

自力で過半数を維持できない自民党を公明党が支え政権が「安定」した結果生み出されたのが「不安定社会」だった。なんとも皮肉ではあるが、これは動かしようのない事実である。

選挙活動に明け暮れる創価学会員たちに、その自覚があるのかないのか分からないが、「安定は、希望」というコピーがなんとも虚しく響く。こんな政治が安定されてはたまらない。(N)(2013年7月21日高知民報)