コラムアンテナ「特別な事由とはなにか」
岡ア誠也高知市長は談合が認定された21企業の指名停止処分期間を短縮するにあたり、「市要綱に短縮できると書いてあるのだから法は犯していない」と発言した(5月8日、共産党高知市議団の申し入れに対し)。

要綱とは「高知市競争入札指名停止措置要綱」のことで4条6項に「市長は、指名停止の期間中の有資格業者について、情状酌量すべき特別の事由又は極めて悪質な事由が明らかになったときは、(略)指名停止の期間を変更することができる」とある。

要綱に「変更できる」とあるから構わないのだと言うが、観点がおかしい。要綱に期間短縮の記載があるのは当然だろう。でなければ短縮はやりたくてもできない。ここで問題になるのは、情状酌量に値する「特別な事由」に、今回の事例が相当するのか否かの一点である。

解釈を濫用し、実態がないのに、「特別な事由」があるとして、恣意的に指名停止期間を短縮するのは要綱に違反する。

市側の説明によると、@県との連携、A「今回指名停止を受けていないA級業者の経営が苦しいという話を聞いた」を短縮の理由にしている。

「特別な事由」は税金が免除される時などによく使われるが、災害で被災した時であったり、一家の大黒柱が倒れ収入が激減したとか、当初予想できなかった突発的な事故や不測の急変があった場合に配慮するとものであるのが通常である。

今回、談合で処分された企業に、処分を決定した昨年秋から、予想できなかったような急変があったのだろうか。公共事業のボリュームが細ったのに、建設業者数が過剰で、経営が苦しいのは、今に始まったことではない。

指名停止を受けた業者が破綻したなら、まだ理由になるかもしれないが、指名停止を受けていない業者の経営難が、なんで処分短縮の理由になるのか理解できない。

処分を決定した昨年秋から事情は大きくは何も変わっていないのだ。

つまり、県に追随するだけが「特別な事由」に相当するのかどうかが問われていることになる。県と高知市は、それぞれ別個の独立した対等な行政機関であり、「県がやったから」だけでは市民への説明にはならない。高知市として何が「特別な事由」に相当するのかを提示し、それは社会通念上通用するものでなければならない。

今回のケースは、形だけ短縮に「お付き合い」して、建設業界に「良い顔」をしただけのことで、実態にほとんど影響はない。それは前号で紹介した建設業界の事情に精通する浜川総一郎市議(新風クラブ)が「効果はともかく、気は心」と述べたことに集約される。

業界側の利益代弁者が「効果はともかく」という程度の処分軽減を、どうしてもしなければならない「特別な事由」を岡崎市長は市民にきちんと説明する義務がある。「特別な事由」を提示できないのに、要綱を歪めて処分期間短縮をすることは許されない。世間ではこういうのを、コンプライアンスの欠如、という。(N)(2013年5月19日 高知民報)