2013年5月12日

コラムアンテナ 「中核市の主体性どこへ」

 
処分軽減が報告された市議会総務委員会(4月30日)
4月30日、高知市は国・高知県が発注した土木建設工事で談合を繰り返していたことが公正取引委員会に認定されたことから指名停止処分を下していた21企業への処分を軽減し、指名停止期間を1カ月間短縮すると市議会総務委員会に報告した。

既に県が指名停止期間短縮を決めていることから、高知市が追随することはある意味「想定内」ではあったが、高知市政にとり、それでは済まされない重大な問題が提起されているのではないだろうか。

今回の指名停止処分は談合=独占禁止法違反という罪を犯した企業へのペナルティである。とりわけ高知市は県と同格の権限を持つ中核市であり、法を犯したものへの処分を軽減しようというからには、高知市が独自に主体性を持って判断しなければならないのは当然だろう。

県が処分を軽減するきっかけは県議会が軽減を求める請願を採択したことであり、県独自に外部委員による談合再発防止策の策定、県建設業協会としての再発防止策の徹底と説明、企業の経営状態の詳細な把握、経済的な影響の分析という経過を経て、臨時県議会を開催し、本会議質問で知事自らが答弁に立った上での苦汁の決断であった。これだけのプロセスを踏んではいても、やはり県民の批判は少なくない。

高知市のこの軽さは何なのだろうか。

県に追随するという以外に理由が見当たらない。高知市議会には同種の請願は提出されていないし、建設業協会からも何の説明も受けていない。

つまり、何も言われてないのに、高知市が「独自」に県に追随し、あえて犯罪を犯した企業への処分を法を曲げてまで軽減するという、驚くべき構図になっているのである。

実はこの時点で既に処分期間が終了している社があるために、結果的には比較的処分が軽かった企業には恩恵がなく、重い企業を救済したことになる。そこには何の論理性もない。無茶苦茶である。

今回の全体の構図がよく理解できたのが、総務委員会での浜川総一郎議員(新風クラブ)の発言だった。浜川議員は高知市内の建設会社がバックにあることで知られているが(今回の処分対象社ではない)、この浜川議員が「1カ月の短縮の効果はともかく、気は心。うれしい」と述べたのである。

効果はどうでもよい。「短縮した」という実績が欲しかったと。

要は建設業界の利益を代弁している議員として、「仕事をした」形をつくることができたと安堵したということではないのか。

今回の事例ほど公平性を投げ捨てることをよしとする市職員はそう多くないと思う。処分軽減を提案する幹部職員には、かつて市民に誠実な仕事してきた職員もいた。公正さを投げ捨て痛痒を感じない組織になっているなら役所としては終わっている。

「どうして県に追随しなければならないのか」との問いに、「総合的な判断」としか言えない幹部職員の姿が何とも痛々しかった。(N)(2013年5月12日 高知民報)