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演説する橋下徹・大阪市長(11月25日、高知駅前) |
11月25日、JR高知駅前で開かれた日本維新の会の街頭演説会。橋下徹代表代行がマイクを握るとあって、橋下氏を一目見ようという大勢の聴衆で駅前広場は埋まった。
「前座」である藤村慎也・高知1区候補が演説中に、黒いワンボックスカーから橋下徹本人が姿を現し、宣伝カーによじ登った。人気者の登場に歓声がわき上がるかと思いきや、微妙な間。聴衆は静かに、じっと橋下氏を見つめた。
50分間にもなった橋下氏の訴えは「消費税5%の増税だけで社会保障はまかなえない。さらなる痛みを我慢しなければならない。予算を高齢者から現役世代にまわせ」ということに尽きた。
既得権益を持つものを敵に仕立て対立を煽るのが橋下流だが、ターゲットは「公務員」から「高齢者」にシフトしていた。世代間の対立を強調し、高齢者に厚い医療や福祉を切り下げよというのがその主たる内容である。
橋下氏が計算違いをしたのが、聴衆の年齢の高さだったようで、高齢者攻撃の後にとって付けたように「今日は20代の方が多いですから」と、ジョークなのかリップサービスなのか、愚にも付かないフレーズを繰り返したのが印象に残る。
演説のもう一つの柱は「競争力」だった。競争原理で弱者を淘汰し、やる気のある企業や人が生き残っていけばよいという弱肉強食論を言わずもがなに説いた。
「商店街が寂れているというが、インターネットの商店街は大繁盛だ。酒も本もCDも。今までのやり方で商売がうまくいかなくなった。じゃあ違うやり方で商売をやる。それが成長だ」
独りごちる橋下氏の演説を聞く聴衆の多くは、どうみてもインターネットとは無縁な世代。まるでブラックジョークだ。
その一方で、橋下氏はTPP、原発など、国の根幹にかかわる政策、「第三極結集」など、有権者が聞きたいことには全く触れようとせず精彩を欠いた。聴衆に何を訴えるべきか、彼なりに逡巡があるようにも見えた。
場の空気を読む天才的嗅覚を持つ橋下氏のことである。聴衆の戸惑い、話が「すべった」ことは百も承知だろう。高知の有権者は、橋下演説をどう受け止めて、評価するのかが、試されている。(N)(2012年12月2日 高知民報) |